研究課題
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)における補体による血管内溶血を、補体C5に対するモノクローナル抗体であるエクリズマブは、極めて有効に阻止する。しかし、C5の遺伝子多型によるエクリズマブ不応の存在や、補体活性化経路でC5の上流に位置するC3が、エクリズマブ投与下でPNH赤血球に蓄積し(オプソニン化)、脾臓などの網内系で破壊される(血管外溶血)などの問題があり、現在様々な新規抗補体薬が開発中にある。PNH治療において最適な治療標的がどこかを評価、検討し、複雑な補体系の解明につなげるのが本研究の目的である。本年度は昨年までに入手した、抗C5薬として遺伝子組換えダニ唾液タンパク質と環状ペプチド、第2経路の活性化を促進するFactor Dの阻害薬、古典経路阻害薬としてC1ーインアクチベーター製剤、またC3阻害薬としてCompstatinを用いて効果を検証した。健常者、PNH患者、エクリズマブ不応例の血清を用いた実験で、ダニ唾液タンパク質、環状ペプチド、Factor D阻害薬、Compstatinの溶血阻止効果を認めたが、C1-インアクチベーター製剤では十分な溶血阻止効果を認めなかった。C5阻害薬は全ての活性化経路を阻害し、Factor D阻害薬は第2経路のみを阻害すること、またC1阻害薬では第2経路の活性を抑制できないことを確認するなど、それぞれの補体活性化経路を評価する手法を確立した。抗C5薬はPNH赤血球上でC3の蓄積を招いたが、Compstatin、FactorD阻害薬では認められなかった。C3阻害薬は血管内・外溶血を阻止するが、全補体経路に影響するため感染増加などのリスクが懸念される。一方Factor D阻害薬などの第2経路標的薬は、血管内・外溶血を阻止しながら古典経路、レクチン経路が保持され、PNHに対する次世代抗補体薬として有望である可能性が示唆された。
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