研究課題/領域番号 |
15K09504
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
谷本 光音 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10240805)
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研究分担者 |
松岡 賢市 岡山大学, 大学病院, 講師 (90432640)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 造血幹細胞移植 / 移植片対宿主病 / 制御性T細胞 |
研究実績の概要 |
これまでに慢性GVHD患者の血液検体の解析から、移植後Tregの恒常性異常が慢性GVHDを発症させる要因となっていること、さらにこのTreg恒常性異常はインターロイキン2(IL-2)の連日低用量投与に可逆的に回復し、臨床GVHDの改善が認められることを臨床試験により明らかにした。移植後Tregの恒常性を治療標的とする低用量IL-2療法(LD-IL2)は、難治性GVHDに対する新たな治療法として確立が期待される。今後、本治療法を非常に多彩な臨床症例に広く適用するには、その作用点をより明確にすることが望ましい。とりわけ、従来からの免疫抑制剤であるカルシニューリン阻害薬との併用は実臨床上不可避であり、LD-IL2と免疫抑制剤の相互の作用機序についての検討が必要である。LD-IL2が登場してきた現在において、IL-2産生を阻害するCsAとIL-2を補充するLD-IL2を併用する理論的妥当性は正確には示されていない状況にある。この課題を明らかにするため、平成27年度は、シクロスポリンによる移植後Tregの疲弊を再現するマウス実験モデルの作成を行った。B6ドナーより致死的照射を与えたB6D2F1マウスに骨髄移植を施行し、まずTregのキメリズム解析を行ったところ、移植後3週目までは、移植片に含まれる成熟したTregの分裂によりTreg分画が維持されることが分かった。この分画がどのように免疫抑制剤による影響をうけるかを検証するために、移植後より、シクロスポリンを含む複数の免疫抑制剤を投与し、Treg動態を検証した。その結果、シクロスポリン群では、活性化T細胞はよく抑制されるものの、Tregも強く抑制がかかり、CD4T細胞中の割合は大きく低下していた。この変化はほかの免疫抑制剤では観察されず、シクロスポリンに特異的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究により、マウス実験系により免疫抑制剤が同種骨髄移植後のTreg恒常性に与える影響を検討することが可能であることが分かった。さまざまな免疫抑制剤が移植後のT細胞サブセットの回復に及ぼす影響は、それぞれに特異的であり、臨床で観察される多様性を表現しているものと考えている。研究全体としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に確立したマウス実験系を用いて、平成28年度よりIL-2の併用が及ぼす影響を検証する。また、IL-2のみならず、他の免疫モジュレーターがTreg再構築に及ぼす影響も併せて検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、マウス実験系の確立に努めたが、比較的安価なマウスで実験を進めることができたため、予定よりも少額で結果を得ることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、高額な免疫抑制剤や、その他の免疫モジュレーターを購入して実験を行うため、平成27年度に予定した費用を使用しつつ進める予定である。
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