研究課題
移植後Tregの恒常性を治療標的とする低用量IL-2療法(LD-IL2)は、難治性GVHDに対する新たな治療法として確立が期待される。実臨床上においては従来からの免疫抑制剤であるカルシニューリン阻害薬との併用は不可避であり、LD-IL2と免疫抑制剤の相互の作用機序についての検討が必要であるが、IL-2産生を阻害するCsAとIL-2を補充するLD-IL2を併用する理論的妥当性は正確には示されていない状況にある。この課題を明らかにするため、まず平成27年度は、シクロスポリンによる移植後Tregの疲弊を再現するマウス実験モデルの作成を行った。B6ドナーより致死的照射を与えたB6D2F1マウスに骨髄移植を施行し、まずTregのキメリズム解析を行ったところ、移植後3週目までは、移植片に含まれる成熟したTregの分裂によりTreg分画が維持されることが分かった。この分画がどのように免疫抑制剤による影響をうけるかを検証するために、移植後より、シクロスポリンを含む複数の免疫抑制剤を投与し、Treg動態を検証した。その結果、シクロスポリン群では、活性化T細胞はよく抑制されるものの、Tregも強く抑制がかかり、CD4T細胞中の割合は大きく低下していた。当該年度である平成28年度は、シクロスポリン以外の免疫抑制剤のTregホメオスタシスに与える影響を確認するため、シロリムス、MMFについても、同様に検証を行った。この結果、シロリムスとMMFでは移植後早期のTreg分画を増加させる作用があることが示唆された。さらにこの系に、LD-IL2を加えたところ、MMF群では活性化T細胞の増加がみられたが、シロリムス群では活性化T細胞の増加はみられず、Treg分画のさらなる増加が確認され、シロリムスとIL-2によるシナジー効果が示唆される結果となった。研究全体としては、おおむね順調に進展していると考えている。
2: おおむね順調に進展している
当該年度である平成28年度は、シクロスポリン以外の免疫抑制剤のTregホメオスタシスに与える影響を確認するため、シロリムス、MMFについても、同様に検証を行った。この結果、シロリムスとMMFでは移植後早期のTreg分画を増加させる作用があることが示唆された。さらにこの系に、LD-IL2を加えたところ、MMF群では活性化T細胞の増加がみられたが、シロリムス群では活性化T細胞の増加はみられず、Treg分画のさらなる増加が確認され、シロリムスとIL-2によるシナジー効果が示唆される結果となった。このように今年度も平成27年度の研究を基盤として新規知見が得られている。このため、研究全体としては、おおむね順調に進展していると考えている。
平成29年度は、平成28年度までに確認できたLD-IL2と各種免疫抑制剤がTreg恒常性にもたらす効果が、GVHDおよびGVLという臨床上の表現型にいかなる影響を与えるかについて検討する。腫瘍モデルとしては、P815細胞株の体内動態をIVISシステムでモニタリングする。
当該年度は細胞解析が主体であったために、使用研究費を抑制することができた。一方、平成29年度には、GVHDとGVL効果を検証するための、サイズの大きい実験を繰り返す必要があり、研究費が相対的に多く必要と考えられたため、総合的に考慮して、使用可能金額を平成29年度へ保持した。
マウス購入、IVIS使用料、さらに最終年度であるため学会発表および論文作成による成果発表を予定している。これらに対して適切に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Blood
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