研究課題
成人T細胞性白血病・リンパ腫(ATLL)に対する化学療法の効果は限定的であり、HTLV-1キャリアが一旦ATLLを発症した場合、治癒を得ることは極めて困難である。ATLLによる死亡者数の低減には、キャリアからの発症予防、早期の治療介入手法の確立が望まれる。これまでにHTLV-1プロウイルス量が高値のキャリアからATLLが発症することが報告されているが、高リスクと判断される集団は、キャリア全体の29%におよび、実際にATLLを発症する比率(~5%)と大きく異なることから、さらに有効なスクリーニング法の開発が望まれる。本研究では、HTLV-1キャリアを対象とした遺伝子解析を行い、ATLL細胞に認められるものと同じ遺伝子変異を持った無症候キャリアを見いだすことによって、高リスクキャリアを同定することが可能か否かを検討する。昨年度までに、HTLV-1キャリアサンプルに対する遺伝子解析をする際に必要となる標的遺伝子を絞り込むために、ATLLに対する網羅的な遺伝子解析を実施した。その結果、ATLLでは計50個の遺伝子で有意に変異が認められることが明らかとなった。また、キャリア末梢血より得たサンプルを用いて上記50個の標的シークエンスが可能か否かについて、CD4陽性細胞由来DNAを用いて検討を行い、同DNAを用いた標的シークエンス系を確立した。今年度は、症例数を約30例に拡大し解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
ATLL症例を対象に網羅的遺伝子解析を実施し、ATLL細胞に認められる遺伝子異常の完全なカタログの作成を完遂し公表した。HTLV-1キャリア末梢血より得たCD4陽性細胞を対象とした、標的シークエンス解析系を確立した。HTLV-1キャリア約30例の検体収集を終了し、標的シークエンスに着手した。小数例であるが、ATLLで特徴的な遺伝子変異がHTLV-1キャリアの時点において既に生じていることを確認した。以上から、本年度の目的は達成出来たと考える。
HTLV-1キャリア検体を用いた解析系は確立済みである。今後は、解析症例数の拡大と、解析済みキャリアの臨床経過の追跡を行う。どのような変異を有する場合に、感染細胞のクローン拡大が効率的に進行するかを明らかにする。
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