研究課題
平成28年度は慢性骨髄性白血病から再生不良性貧血を続発した患者より樹立した細胞傷害性T細胞(CTL)を用い、CTLが傷害したK562細胞由来cDNAライブラリの発現スクリーニングを実施した。cDNAライブラリは1プールあたり100クローンで作成されており、96ウェルプレート1枚で約1万cDNAクローンのサイズであった。当初HLA-B*40:02を導入した293T細胞にトランスフェクションし、CTLクローンと共培養して産生されるインターフェロンγ(IFNg)の測定を試みたがバックグラウンドが高かったため、COS7細胞にHLA-B*40:02を導入しなおして実施した。アッセイを順次行ったところ1カ所IFNg産生を認めたため、そのcDNAプールをE.coliに再導入、5コロニー/wellでサブライブラリを作成し再検したところ3プールでIFNg産生を認めた。各プールのコロニーをランダムシーケンスしたところ、ATP synthase 6.2が3プールに共通して存在していた。次いでこの遺伝子について5カ所で細分化したミニ遺伝子を作成しエピトープマッピングを行ったが、CTLからIFNgの産生を刺激するものは見いだされなかった。そこで上記のランダムシーケンスを進めたところ、もう1つ共通の遺伝子X(局在12q13)が見いだされ、このXの全長cDNAを再導入したCOS7はCTLからのIFNgの産生を刺激できたためCTL抗原候補遺伝子として、現在エピトープのマッピングを行っている。なお本来スクリーニングに使用を予定していた重症再生不良性貧血患者由来のCTLクローン(A6-CTL)は増殖不良のため使用出来なかった。そこで現在A6-CTLよりTCRα/β遺伝子をクローン化しTCR欠損Jurkat細胞株に導入し、上記のクローンと同一の抗原を認識するかを確認する予定である。
3: やや遅れている
当初予定していたcDNAライブラリ導入細胞(293T)が非特異的反応を示し、代替となるHLA-B*40:02導入COS7を作成するのに時間を要した。また当初プローブとして使用予定であったA6-CTLクローンの増殖が悪く、代替方法の検討に時間を要した。
研究方針について当初からの変更はない。今後同定を進めて抗原エピトープが再生不良性貧血の病因となる抗原と確定出来れば、予定通りテトラマー試薬を作成し、複数のHLA-B*40:02陽性再生不良性貧血患者の血液についてCTLの存否の検討を進めていくとともに、NOGマウスを用いたin vivoでのモデル実験を実施する。なお、HLA-B*40:02陽性の新たな患者が登録されず、新たなCTLクローンを樹立する案件は現時点で患者リクルート状態となっている。
研究に用いる予定であった細胞の不具合と増殖不良があり、年度内に予定していた複数のミニ遺伝子合成やペプチド合成、テトラマー合成に至らず支出予定を下回った。
昨年度予定していたミニ遺伝子合成やペプチド合成、テトラマー合成を本年度実施するため、これらの費用に充当する予定である。
すべて 2016
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Br J Haematol.
巻: 171 ページ: 131-134.
10.1111/bjh.13464