研究課題
平成30年度は昨年度報告した慢性骨髄性白血病から再生不良性貧血を続発した患者より樹立した細胞傷害性T細胞(B10-CTLと命名)が認識する抗原エピトープのバリデーションを実施した。HLA-B*40:02分子への結合しているエピトープペプチド配列は一般的な9アミノ酸配列ではなく、11アミノ酸からなる11-merの配列OS91-11:MAAETLLSSLLであった。OS91-11ペプチドをパルスしたHLA-B*40:02発現K562はB10-CTLで認識されたが、患者の体内にこのペプチドを認識するCTLが確かに存在するか検討した。OS91-11ペプチドをパルスした患者樹状細胞(2, 3回目は自己活性化T細胞芽球)を用いて患者の末梢血T細胞を刺激したところ、3回刺激後に急激なT細胞の増殖を認めたが、ELISAアッセイにおいてOS91-11抗原を提示する細胞に対してIFN-γ産生を示さなかった。そこで再生不良性貧血の病態の場となっている患者の骨髄細胞をペプチド単独で刺激後、ペプチドパルス自己活性化CD4+ T細胞芽球で2回刺激後に得られたT細胞株は、オリジナルのB10-CTLよりも弱いながらHLA-B*40:02拘束性にK562細胞を傷害できた。以上より、患者の骨髄にはOS1-11抗原を認識するCTLが存在し、病態を形成していた可能性が高いと考えられた。当初検討を予定していた重症再生不良性血患者由来のCTLクローン(A6-CTL)よりTCRα/β遺伝子をクローン化し、健常人の末梢血T細胞にTCRを導入してもHLA-B*40:02発現K562を傷害できたので、これを引き続きプローブとして用いた。新たにK562細胞株から完全長のcDNAを作成し、昨年度までアッセイしてきた平均長1.2Kb程度のライブラリに対し、平均長2.75KbのプールからcDNAライブラリを作り、のべ9.6万クローンをアッセイしたが陽性は認められなかった。さらに完全長で短いプール(平均長1.46Kb)からもライブラリを作り、のべ1.9万クローンをアッセイした段階では陽性結果は得られていないため、引き続きアッセイを行っている。
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Blood Adv.
巻: 2 ページ: 390-400
10.1182/bloodadvances.2017013342