研究課題
造血幹細胞移植は血液難病の根治療法である。本研究の最終目標は、造血幹細胞移植成功率を飛躍的に高めることにある。免疫調整遺伝子多型解析をもとに最善のドナーを選び、移植後合併症を予測し予防するテーラーメード型移植法を確立するため、日本骨髄バンクを通じた非血縁者間同種骨髄移植患者・ドナーの試料(DNA)・臨床データを用いて、遺伝子多型との関連を後方視的に検討した。平成27年度は、トロンボモジュリン・TLR1各遺伝子多型の機能的役割を見出し、同種造血幹細胞移植における臨床的影響を検証した。トロンボモジュリン誘導能が高い遺伝子多型を有するドナーから移植を受けた場合、移植片対宿主病発症率が有意に低く、死亡率も低いことがわかった。トロンボモジュリンには抗炎症作用や組織障害保護作用が期待されることから、同種造血幹細胞移植後移植片対宿主病に対するトロンボモジュリンの予防・治療効果を示唆する成果と思われる。さらにToll-like receptor (TLR) 1誘導能が高い患者、あるいはTLR1誘導能が高いドナーを有する患者の場合、移植関連死亡率が低いことがわかった。TLR1は感染免疫における役割が示唆されていることから、新規治療法開発への発展性も期待されると考えられた。さらに、TLR-2・4、CCL2、CCR5・6、IL-23R、IL-12RB各遺伝多型を決定し、解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
複数遺伝子多型の解析を終え、学会発表、論文投稿へと進めていることから、おおむね順調に進展していると判断した。ただし、機能解析や前向き研究は現在準備中であり、当初の予定以上に進展している状況にはない。
後方視的結果に基づき、各遺伝子多型解析に必要な試料・臨床データ数を算出し、血縁者間造血幹細胞移植を対象に、前方視的検討を行う。さらに、臨床解析で臨床的意義が確認された多型遺伝子を対象に機能解析を行い、ゲノム機序の解明を図る。順調に推移すれば、新たに明らかとなった機能的遺伝子多型を健常人・患者の血液細胞や細胞株へ導入し、アリル特異的な抑制・増強が発現レベルやサイトカイン産生能、細胞機能に与える影響を検証する。前方視的研究への参加が不足する場合は、インターネットを用いた広報活動を強化する。遺伝子多型解析・データ解析が円滑に進まない場合は、実験補助者1名の雇用を検討する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 16件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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