研究課題/領域番号 |
15K09516
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
涌井 秀樹 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70240463)
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研究分担者 |
布村 渉 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70256478)
小松田 敦 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70272044)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 免疫抑制剤 / 免疫調節剤 / 薬剤アフィニティーカラム / 血液・免疫組織 / 薬剤標的蛋白質 / 新規薬理作用 / 臨床応用 / 温故知新創薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、有効性と安全性が評価されてきた既存の免疫抑制剤・免疫調整剤の新たな薬理作用を発見し、その臨床応用(適応症の拡大など)を目的としている。本年度は、研究代表者の臨床経験と文献調査結果をベースに、以下の薬剤を選定して薬剤が標的とする蛋白質候補の同定作業を進めた。 既存の免疫抑制剤・免疫調節剤として、hydroxychloroquine(HCQ)、methotrexate(MTX)、5-aminosalicylic acid(5-ASA)、methylprednisolone(mPSL)をエポキシ活性化セファロースに結合させ、薬剤アフィニティーカラムを作製した。HCQカラムには、ヒト赤血球膜蛋白質溶液を添加した。また、HCQを含む全て薬剤アフィニティーカラムに、ウシ胸腺・脾臓から抽出した蛋白質溶液を添加した。カラムを洗浄後、対応薬剤を含むバッファーで結合蛋白質群をカラムから特異的に溶出した。HCQに結合性を有する赤血球膜蛋白質は、抗体を用いたWestern blotにより同定した。その他の薬剤結合蛋白質は、電気泳動後の蛋白質バンドを切り出し、酵素処理で得られたペプチドの質量分析を行って同定した。以下に、本年度の主な結果を示す。 1.ヒト赤血球膜のHCQ結合蛋白質として陰イオン交換輸送体(Band 3蛋白質)や細胞骨格系蛋白質を同定した。薬剤結合部位と機能阻害についての検討結果から、HCQの副作用が少ない理由を示唆した。HCQに関しては、乳酸脱水素酵素(LD)阻害を示唆する先行論文があり、H2M2アイソザイムの活性阻害が強いことを新たに見出した。 2.ウシ胸腺・脾臓から、免疫機能調節に重要な幾つかの蛋白質を、HCQ、MTX、5-ASA、mPSL結合蛋白質として同定した。これらの蛋白質は、臨床応用の観点から有望な薬剤標的蛋白質候補であり、今後の解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、幾つかの薬剤標的蛋白質候補を同定している。 1.ヒト赤血球膜のHCQ結合蛋白質については、査読付き論文として国際学術雑誌に掲載が決定し、現在印刷中である。また、HCQのLDアイソザイムH2M2活性阻害作用については、抗癌剤としての臨床応用への展開が期待でき、国際学会で発表した。 2.他の薬剤結合蛋白質も、研究目的に合致した免疫調節系に重要な薬剤標的蛋白質候補であり、今後の研究展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、おおむね順調に進展していることから、「研究実績の概要」で述べた各々の薬剤結合蛋白質について、今後の研究を推進する。特に、以下の3点に焦点を絞る。 1.薬剤と結合蛋白質との結合様式を解析する。 2.薬剤が結合蛋白質の機能に及ぼす影響を解析する。 3.世界的な研究動向を注視しながら、必要に応じて新たな薬剤を追加選定する。その結合蛋白質を同定し、本年度と同様に研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた消耗品の使用計画の一部を変更し、次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品使用計画に加える。
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