研究課題/領域番号 |
15K09519
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坪井 洋人 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80580505)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 / シェーグレン症候群 / CCL18 / CCR8 / 口唇唾液腺 / 涙腺 |
研究実績の概要 |
【研究成果の具体的内容】1)IgG4関連疾患(IgG4-RD)(N=9)、シェーグレン症候群(SS)(N=10)、健常人(HC)(N=4)の口唇唾液腺(LSG)より抽出したRNAを用いて、CCL18の発現を定量PCRで比較した。SSおよびHCと比較してIgG4-RDのLSGでCCL18は有意に高発現していた(P<0.05)。 2)IgG4-RD(N=3)、SS(N=4)、HC(N=5)の間で、LSGにおけるCCL18のタンパクレベルでの発現を、免疫蛍光染色(IF)で比較した。IgG4-RDのLSGでは、CCL18のタンパクレベルでの高発現が認められたが、SSおよびHCのLSGではCCL18の発現は認められなかった。 3)IgG4-RD(N=3)のLSGを用いて、マクロファージ(CD68)、樹状細胞(CD11c)、B細胞(CD20)、形質細胞(CD138)におけるCCL18のタンパク発現を、二重免疫蛍光染色(IF)で検討した。IgG4-RDのLSGで、多数のマクロファージ、樹状細胞、B細胞、形質細胞がCCL18を発現していた。これらの各細胞分画におけるCCL18陽性細胞数は同等であった。 4)IgG4-RD(N=1)の涙腺を用いて、CCR8のタンパク発現と発現細胞(T細胞(CD3)、B細胞、形質細胞)を、二重免疫蛍光染色(IF)で検討した。多数のT細胞、一部の形質細胞、少数のB細胞がCCR8を発現していた。 【研究成果の意義と重要性】IgG4-RDの病変局所でマクロファージ、樹状細胞、B細胞、形質細胞が産生したCCL18は、その受容体であるCCR8を発現するT細胞、B細胞、形質細胞の病変局所へのケモタキシス、線維化誘導を介して、IgG4-RDの病態形成に寄与する可能性が示唆された。CCL18-CCR8シグナルは、IgG4-RDの新規治療標的になり得ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、平成27年度に、IgG4関連疾患(IgG4-RD)の病変局所におけるCCL18とその受容体であるCCR8のタンパクレベルでの発現と発現細胞を解析することができた。今後検体数を増やして、IgG4-RD、シェーグレン症候群(SS)、健常人(HC)の口唇唾液腺(LSG)の各細胞サブセット(マクロファージ、樹状細胞、B細胞、形質細胞)におけるCCL18陽性細胞数の比較、統計学的解析を追加する。またCCR8のタンパクレベルでの発現、発現細胞をIgG4-RD、SS、HCのLSGを用いて比較し、統計学的解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
【IgG4関連疾患の病態形成におけるCCL18-CCR8シグナルの機能解析(in vitro)】IgG4関連疾患(IgG4-RD)の病変局所におけるタンパクレベルでの発現増加が確認されたCCL18-CCR8シグナルに関して、末梢血CD14陽性単球から分化させたマクロファージ、およびT細胞、B細胞を用いて、in vitroでの機能解析を行う。 【DNAマイクロアレイのデータを用いた新たな疾患関連分子の探索】先行研究で得られたDNAマイクロアレイのデータ(GEO Series accession number GSE40568)を用いて、シェーグレン症候群(SS)と比較してIgG4-RDの口唇唾液腺で発現が増加した発現変動遺伝子の中から、Gene Ontology (GO) annotationを用いて、Th2細胞、Treg細胞、Tfh細胞の増加、IgG4クラススイッチ亢進、線維化に関与する新たな分子を抽出する。また、抽出された分子に関して、定量PCRによるvalidationを行う。
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