研究課題
1.Bcl6欠損マウスおよびT細胞特異的Bcl6欠損マウスにおける抗原特異的免疫応答の解析:Bcl6欠損マウスおよびT細胞特異的Bcl6欠損マウスをNP-OVAで免疫し、胚中心応答と抗体産生能を解析した。その結果、どちらのマウスにおいても胚中心形成は認められなかった。このことから胚中心応答を誘導、形成するためにT細胞におけるBcl6発現が重要であることが明らかになった。また、申請者らの研究室で以前報告したRag1欠損マウスへのリンパ球移入キメラマウスで明らかにした抗体産生は、B細胞がBcl6欠損の場合を評価できた。この系ではBcl6欠損B細胞のマウスでは高親和性の抗体価の上昇は見られず、低親和性の抗体価は野生型とほぼ同等のレベルに上昇した。ところが、Bcl6欠損マウスに直接免疫した場合、もしくはT細胞特異的Bcl6欠損マウスに免疫した場合は高親和性、低親和性ともに抗体価がほとんど上昇しなかった。このことからT細胞におけるBcl6の機能は胚中心応答に関わるだけでなく親和性を上げていないB細胞による抗体産生にも重要であることが明らかとなり Bcl6が広範な液性免疫応答に関わることが示唆された。2.自己免疫疾患モデルマウスにおけるBcl6の役割:現在、ループスエリテマトーデスモデルや関節炎モデルをはじめ、複数の自己免疫疾患モデルにおけるBcl6の関わりの解析を進めている。活性化DNAをマウスに免疫してループスエリテマトーデスの発症を誘導する系で抗ds-DNA抗体価を上昇させることができたため、Bcl6欠損マウスを用いた実験を行っている。
2: おおむね順調に進展している
T細胞におけるBcl6の機能は免疫応答に大きく関与することが明らかになった。また自己免疫疾患モデルマウスの系でもT細胞におけるBcl6の発現が関与する結果が得られている。
1.誘導性自己免疫疾患モデルにおけるBcl6の役割を明確にする。また、自然発症自己免疫疾患モデルはマウスの背景が影響する系が多い。ゲノム編集の技術を開発してBcl6欠損マウスを作成する研究を試みる。2.Bcl6の機能を阻害する化合物を探索し、自己免疫疾患の系で治療薬になりうるか評価する。3.Bcl6の標的遺伝子をChIPシークエンス等で明らかにする。
平成27年度は研究代表者の部局異動があり、実験動物もクリーンアップによる移動を行う必要があった。そのため、規模を拡大して実験を行うことが困難で、実験内容が限定的になった。異動もほぼ終了のめどが付き、実験動物の繁殖が行えるようになった。
自己免疫疾患モデルマウスによるBcl6の役割を解析するため、実験動物の飼育費が多く必要になる。さらにBcl6阻害剤の検索を目的に、機能検出のための抗体や、定量PCRのための酵素等の試薬が必要になる。Bcl6の抗体はあまり良いものがなく、ChIPシークエンス用にTag付きのペプチドBcl6阻害剤を用いる。さらにゲノム編集のための試薬費等に使用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Arthritis & Rheumatology
巻: 67 ページ: 2651-60
10.1002/art.39266.