研究課題
本研究では 主に以下の3つの研究を行った。1.自己免疫疾患の発症、病態形成に関わる転写因子を検索した:その結果、転転写因子Aが発症に関わるばかりでなく、病態継続・悪化にも関わることをマウスモデルを用いて明らかにした。1)T細胞特異的CD4Cre A欠損マウスでは疾患が発症しない 2)Ert2Cre A欠損マウスを用いて発症後に機能を欠損させたところ症状が軽快した。以上の結果から、Aの阻害剤は自己免疫疾患の新規治療薬として応用できると考えられた。2.阻害剤の探索:すでに複数の阻害剤の報告があるが、必要投与量が多く、煩雑・頻回な投与が必要である。広く臨床で使用するためには、より効果があり比較的安価な低分子化合物の阻害剤の開発が望まれる。これらを踏まえ、実際に阻害剤の探索を行った。大学の化合物ライブラリより低分子化合物の提供をうけ、以下のスクリーニングを行った。1)蛍光偏光法による結合スクリーニング 2)バイオインフォマティクスによる結合予測解析 3)培養系による機能阻害効果評価。 これらの条件を満たす 複数の新規阻害剤候補化合物を見出すことができた。3.薬剤デリバリの検討:効果的な投与法を開発する基礎研究として、ICGリポソームを用いた薬剤デリバリの検討を行った。マウスに免疫後、炎症の現場である脾臓内ICGをIVISを用いて検査したところ、リポソームなしではICGは速やかに生体内から消失したが、リポソーム添加時には脾臓で1週間にわたり検出された。薬剤投与法の開発に応用できる。
2: おおむね順調に進展している
以下3点の研究それぞれに対し、明確な結果を得ることができたため。1.自己免疫疾患の発症、治療に関わる転写因子を明らかにできた。2.明らかにした転写因子の阻害剤候補化合物を複数得ることができた。3.薬剤デリバリ法の基礎情報を得ることができた。
以下2点を中心に研究を推進する1.自己免疫疾患発症おける転写因子Aの機能メカニズムの解析:自己免疫疾患を誘導した転写因子A欠損マウスでの免疫学的、病理学的検討をおこない、メカニズムを明らかにする。T細胞分化やタンパク発現の違いが認められれば、それらが実際に病態に関わるものであるか検証する。メカニズムが明らかになれば新規治療標的となる可能性がある。2.阻害剤の生理学的有用性の検証:本年度に得られた低分子化合物に有用性・安全性を実際にマウスモデルに投与することで確認する。ただし大容量の提供、最適化に人的・経済的に難航する恐れがある。その場合は培養系において評価できる生理活性を検討するとともに、新規研究費の獲得を心掛ける。
本年度阻害剤探索のスクリーニングを行った。低分子化合物の提供に必要と考えていた経費が掛からず、無料で済み、スクリーニングも予定より少ない経費で行うことができた。今後 阻害剤としてのヒット化合物の高容量提供、創薬機構の化合物提供およびスクリーニングのためのタンパク質合成、最適化の実施に経費が掛かる見込みのため、次年度に繰り越した。
平成28年度のヒット化合物の高容量提供、創薬機構の化合物提供およびスクリーニングのためのタンパク質合成、最適化の実施に使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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