研究課題
天然アミノ酸であるシトルリンを含む環状ペプチド(cyclic citrullinated peptide; CCP)に対する抗体(anti-citrullinated protein antibodies; ACPA) は、関節リウマチ(RA)患者に特異的に出現する自己抗体である。その自己抗原を同定することでACPAの誘導メカニズムやRAとの病態を考察する研究が進められている。本研究では、我々が単離したシトルリン化ペプチドcfc1-cyc と結合するRA患者由来モノクローナルACPA(CCP-Ab1)を用いて、その抗原の同定を進めた。平成28年度は、平成27年度で見いだされたCCP-Ab1と結合する血漿中の高分子領域のタンパク質の同定を試みた。血漿をBlue Native PAGEにより分離し、目的分子量位置のゲルを切り出し、それを用いて質量分析を行った結果、多数のペプチドが同定され、幾つかの候補抗原が見いだされた。現在これら候補抗原の検証を行っている。X線結晶構造解析に必要なFab化抗体は10mg以上と非常に多い。またマウスに投与するCCP-Ab1の必要量も数mg以上と多い。抗体作製の費用がかさむことから、CCP-Ab1の安定発現株を樹立し、抗体の大量調整を行うことを試みた。平成28年度中に、安定発現株を樹立することができ、抗体の大量調整基盤が整った。現在この細胞株を用いて、X線結晶構造解析に必要なFab化抗体、及びin vivo投与に必要な抗体の大量調整を行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度中に予定してた、CCP-Ab1と結合するネイティブタンパク質の候補を見いだす事、共結晶化スクリーニング及びin vivo投与に必要な抗体の大量調整基盤を調える事のいずれも達することができた。これら基盤を元に、CCP-Ab1と結合するネイティブタンパク質の同定、X線結晶構造解析、及びin vivoモデル実験が行えるようになったため、おおむね順調に進展している、とした。
平成28年度までに、CCP-Ab1と結合するネイティブタンパク質の候補が見いだされたため、これらタンパク質の確認を行うと供に、候補タンパク質の同定を行う。具体的には、得られた候補のリコンビナントタンパク質を作製、もしくは入手し、CCP-Ab1と確かに結合するかを検証する。X線結晶構造解析に必要なFab化抗体は10mg以上と非常に多い。またマウスに投与するCCP-Ab1の必要量も数mg以上と多い。平成28年度までにCCP-Ab1の安定発現株が樹立できたことから、抗体の大量調整基盤が整った。今後この細胞株を用いて抗体の大量調整を行い、CCP-Ab1と抗原ペプチドであるcfc1-cycとの共結晶化スクリーニング、及びin vivo投与を進めていく。
抗体の大量調整には経費がかかる問題が存在していた。抗体作製の経費削減系を別の事業により試みた結果、想定以上に削減効果が得られる系が得られたため、本研究でも取り入れた。そのため想定していた経費よりも安く抑えることができた。また昨年度からの繰越金もあった事から、今年度も来年度へ繰り越す額が生じる結果となった。
来年度の大きな実験系として、X線結晶構造解析を行うための結晶化スクリーニングを予定している。このスクリーニングには経費が削減できたとは言え、大量の抗体と膨大な数の結晶化条件を試す必要がある。これは経費がかかる実験系であり、これに充てる事を予定している。
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