研究課題
関節リウマチ(RA)の分野では生物学的製剤(Bio製剤)治療により、飛躍的に有効性が高まった。しかしBio製剤は高額(数万円/月)であるため、特に高齢低所得者にとっては経済的に困難である。少なくとも投与後無効であってはならない。しかるに近年10-15種のBio製剤が開発され、治療薬選択を困難にしている。このため個々の患者毎に、治療前にどの治療薬が有効かを予測することが重要となっている。我々は昨年度、トシリズマブ(IL-6阻害Bio製剤)またはエンブレル(TNF-α阻害Bio製剤)治療をうけ、16週後の関節評価(DAS-28)ができた100名弱の患者を対象とした。治療開始前の患者血清中のサイトカイン、ケモカイン、可溶性レセプター等31種のバイオマーカーを測定し、16週後のDAS-28を予測、あるいは寛解導入確立位を予測しうるバイオマーカーを特定した(Plos one)。本年は異なる施設の患者を用いて同様の検討を行った。今回は慶応大学の患者で24週後のDAS-28、及び寛解/非寛解を確認したトシリズマブ使用患者(60名)、インフリキシマブ(TNF-α阻害Bio製剤)使用患者(40名)を対象とした。目的変数としてはバイオマーカーのみならず、患者ベースラインデーター、治療法等を加え、95種とした。統計解析は昨年の多重回帰解析(Multiple linear assay, Multiple logistic assay)と共にLASSO法を用いた。その結果、Multiple linear assay及び Multiple logistic assayでは目的変数が多数であたったため解析できず、LASSO法で解析法を変更した。現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
①予備研究以上に予測確率又は一致率を高めるため、31のマーカーを95マーカーに増加した。従来のサイトカイン、ケモカイン、可溶性レセプター以外に他のRA関連因子、更に患者データベース値、治療法等を加えた。②新規対象施設の慶応大学での倫理委員会の認可が得られ、また研究内容に対する同意を患者全員から得られた。③治療開始前の血清が得られ、また患者診療記録から24週後の関節評価(DAS-28-ESR, CDAI, SDAI)を把握することができた。④血中バイオマーカー値が測定された。⑤但し、統計解析に従来と同様のMultiple linear及び Multiple logistic法を用いたが、目的変数が多数のため解析不可ということがわかり、現在統計解析法を変更して解析中である。
①新しい統計解析法としてLASSO法を採用し、慶応大学患者のトシリズマブ及びインフリキシマブ治療患者を対象にして解析中である。②LASSO法により解析されたならば、解析により得られたマーカーの実測値を用いて、実測DAS-28、CDAI、SDAI値に近い予測値を算出しうるマーカー群を特定する。③特定されたマーカー群を用いて、前向き研究のため予備研究をする。即ち特定したマーカー群を用いた計算式に治療開始前の患者血中バイオマーカー及びベースラインデーターをあてはめ効果予測DAS値等を求める。この予測値と24週後の実測DAS値との一致率あるいは寛解率との一致率を求め、検証する。前向き研究の患者は、トシリズマブまたはインフリキシマブ患者とする。
年度末に研究会が重なり、実験時間が確保できなかったため予定していたサイトカインの測定実験を5月に延期した。
その他の実験スケジュールを調整し、全体の進捗に遅れは生じない見込みである。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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