研究課題
最終年度には、Glutaminase (GLS)1阻害薬がマウス関節炎を抑制するメカニズムについて、さらに詳細な解析を進めた。まず、グルタミン代謝がRA滑膜細胞(RA-FLS)のメディエーター/サイトカイン産生に与える影響について解析した。GLS1をsiRNAで発現低下させた細胞をIL-17やPDGFで刺激して検討を行ったところ、MMP-3やIL-6の分泌能については有意な変化を認めなかった。一方、RA滑膜細胞ではOA滑膜細胞に比してMYCの発現が高い傾向にあることを見出した。滑膜細胞において、MYCがGLS1の発現に影響を与えている可能性が考えられた。研究期間を通じて、我々はまずGLS1、HK2、MCT4、PDK1といった代謝に関わる分子のmRNAおよび蛋白がRA-FLSで高発現していることを発見した。さらに、細胞内メタボロミクスにより、RA-FLS中の代謝産物の消費が亢進していることを見出した。続いて、RA-FLSのMCT4、PDK1、GLS1をsiRNAでノックダウンしたところ、細胞増殖能が有意に抑制された。加えて、RA-FLSの細胞増殖能は、グルタミン不含培地では減少したが、グルコース不含培地では減少しなかった。また、RA-FLS をIL-17あるいはPDGFで刺激すると、GLS1遺伝子発現が上昇することを見出した。RA-FLSの細胞生存性および増殖能は、GLS1阻害薬であるcompound 968(C-968)添加で低下した。最後に、SKGマウス関節炎にC-968を投与したところ、臨床的および組織学的関節炎スコアは大きく低下した。C-968投与群の足関節組織ではKi-67陽性滑膜細胞が減少していた。以上から、グルタミン代謝はRAの病態に関与していることが示唆され、ヒトにおいてもグルタミン代謝阻害薬は新たな治療薬となりうると考えられた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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