研究課題
In vitroの細胞培養系においてCTLA-4-Igはヒト末梢血CD14+単球由来破骨細胞(M-CSF+RANKLで誘導)分化を有意に抑制し(TARP染色および破骨細胞のマスター遺伝子発現)、その分化抑制過程を検索中である。検索経過において、マイクロアレイでの遺伝子発現変化に関して、CTLA-4-Igで発現が変動するpathwayを複数同定し、これらの意義をシグナル伝達解析から確認中である。活動性RAを対象とした九州地区多施設共同前向きRA超音波コホート研究において、アバタセプト(CTLA-4-Ig)で加療された症例の血清検体を用いたバイオマーカーの検索も行った。それではIP-10低下、可溶性RANKL(sRANKL)低下、OPG上昇、TRACP-5b上昇など、免疫系ならびに骨代謝系に関連する分子の発現変動が有意に検出された。RA末梢血CD14+単球のサブセット解析では抗CCP抗体(ACPA)陽性患者においてはM1サブセットが優位であることも確認した(フローサイトメトリー法での評価:健常人においてはソーティングした単球分画において、M1はM2と比較して、有意にLPS刺激下のIL-6産生が亢進していることも確認)。TNF-α およびIL-6も単球・破骨細胞系を活性化しRAの骨関節破壊を進展させることが明らかであるが、九州地区多施設共同前向きRA超音波コホート研究におけるpreliminaryな検討において、TNF阻害薬、IL-6阻害薬(トシリズマブ)でのバイオマーカー変動はアバタセプト(CTLA-4-Ig)と異なる点があることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の大きな目標は、In vitroの細胞培養系を用い、CTLA-4-Igの作用を、RAの病態形成に重要な細胞群の分化・サイトカイン産生・アポトーシス感受性の観点から解析し、これを臨床情報と統合することである。In vitroの細胞培養系では、CTLA-4-Igはヒト末梢血CD14+単球由来破骨細胞(M-CSF+RANKLで誘導)分化を有意に抑制し(TARP染色および破骨細胞のマスター遺伝子発現)を確認した。Key moleculesの特定に関してはマイクロアレイでの遺伝子発現変化(ヒト末梢血CD14+単球)に着目し、CTLA-4-Ig刺激で有意に発現変動が惹起されるpathwayがあることを検出し、これの詳細を検討中である。このpathwayの特定はどのようなシグナル伝達でCTLA-4-Igが破骨細胞分化を抑制しているかの理解にきわめて重要と考えている。臨床情報に関しては活動性RAを対象とした九州地区多施設共同前向きRA超音波コホート研究において、アバタセプト(CTLA-4-Ig)で加療された症例の血清検体の解析を進め、42分子のmulti-suspension cytokine arrayにおいて、複数の有意発現変動を示す分子が明らかとなった。アバタセプト(CTLA-4-Ig)の臨床効果(超音波活動性を重視)と組み合わせ、CTLA-4-Igの臨床効果発現と関連性が高い分子を抽出し、上述のIn vitroデータとの整合性を検討予定である。アバタセプト(CTLA-4-Ig)は抗CCP抗体(ACPA)陽性患者で有効性が高いことが報告されるが、RA末梢血CD14+単球のサブセット解析ではACPA陽性患者においてはM1サブセットが優位であることも確認した。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
平成29年度は平成27-8年度の解析を継続し、CTLA-4Igが惹起するリバースシグナルにおけるKey moleculesを抽出し、臨床情報と統合し、RAの次世代の治療標的の探索を目指す。In vitro解析において、CD14+単球におけるCTLA-4-Igで惹起される抑制シグナルを特定し、これが他lineageの細胞群の重要な生理(RA病態形成)機能に必須か否かを評価する。臨床情報に関しては九州地区多施設共同前向きRA超音波コホート研究の解析を進める。平成28年度までにおいて、アバタセプト(CTLA-4-Ig)の治療経過で免疫系ならびに骨代謝系に関連する分子の発現変動が有意に検出された。平成29年度ではTNF阻害薬、IL-6阻害薬(トシリズマブ)、JAK阻害薬(トファシチブ)との比較検討を進める。すなわち、In vitro解析と臨床情報の両面から、CTLA-4-Ig特異的な経路の特定を目指す。平成28年度の臨床情報解析(九州地区多施設共同前向きRA超音波コホート研究における血清データ)より、CTLA-4-Igは骨代謝への影響も十分に考えられ、骨粗鬆症の病態にも関連する研究も計画する可能性がある。これらIn vitro解析と臨床情報の統合に加え、動物モデル(コラーゲン誘発関節炎)でRA治療標的候補分子の有用性を実証する。すなわち、治療標的候補分子の組織や細胞での発現分布の確認と候補遺伝子ノックダウンによる関節炎治療効果を評価するが、骨粗鬆症への応用可能と判断された場合は、骨粗鬆症モデル動物(卵巣摘出マウス)で同様に解析し、次世代の治療標的を探索する。
当初の計画より試薬類が少なくても実験が遂行できたため。
今後も複数の実験計画があり、それに用いる予定である。
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