研究実績の概要 |
本年度は,当院で経験した皮膚筋炎 (Dermatomyositis: DM)で急速進行性間質性肺炎(Rapidly progressive interstitial lung disease: RP-ILD)を併発した症例の血清を用いて様々なサイトカイン(TNFα, TNFβ, IL-1α, IL-1β, IL-4, IL-6, IL-17A, IL-23, IFNγ, TGF-β, M-CSF, VEGF-A, sRANKL, OPG) の経時的変化の検討および同病態の死亡リスク因子の解析をおこなった. 【方法】RP-ILD併発DM 7例(生存例2例,死亡例5例)の血清について,上記サイトカイン濃度を経時的に測定した.また同病態20例(生存例12例および死亡例8例)をレトロスペクティブに生存群と死亡群に層別化して,その死亡リスク因子を検討した.生存群,死亡群の2群間の比率の比較はχ二乗検定,検査値の比較にはStudentのt-testを用いて行った. 【結果】今回のサイトカインの経時的検討では,IL-6以外のサイトカインの推移に一定の傾向を認めなかった.血清IL-6値は,生存例で経過とともに検出限界以下になったのに対して,死亡例では全例で上昇あるいは,陽性になっていた.死亡リスク因子の検討では,男性,高齢発症,胸部CTにて下肺野を超えた浸潤影を認めた症例,縦隔気腫を併発した症例,多関節痛の併発が低頻度,血清KL-6値高値,血清フェリチン値高値,血清SP-D値高値、血清CRP高値が死亡群で有意に高率であった.特に死亡群の血清SP-D値高値は初診時の時点で既に高値であった症例が高頻度であった. 【結論】今回のサイトカインの検討では,血清IL-6値が,病勢と関連している可能性が示唆された.また,同病態の死亡リスクを推定する因子として従来報告されている項目以外に男性,縦隔気腫の併発,多関節痛低頻度,血清SP-D値高値が挙げられ,それらはRP-ILD併発DMの予後推定の指標となる可能性が示唆された.特にSP-Dが高値となる病態のRP-ILD併発DMへの強い関与が示唆された.
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