研究課題/領域番号 |
15K09534
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎二 東海大学, 医学部, 教授 (90276238)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 皮膚筋炎 / 急速進行性間質性肺炎 / 自己抗体 / 抗MDA5抗体 / 抗CADM-140抗体 / 無筋症性皮膚筋炎 / 予後 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
【目的】抗MDA5抗体は,皮膚筋炎(Dermatomyositis: DM),特に筋炎症状に乏しい皮膚筋炎(Clinically amyopathic DM: CADM)に見出され,急速進行性間質性肺炎(Rapidly progressive interstitial lung disease: RP-ILD)との密接な関連が知られている.本年度は,当院で経験した抗MDA5抗体陽性のRP-ILDを併発したDM症例の血清を用いて,抗MDA5抗体陽性RP-ILDにおける治療後の短期的および長期的な抗体力価の推移について検討した. 【方法】これまで当科を受診した抗MDA5抗体陽性のRP-ILD 併発DM患者例を対象として診断時/治療開始前と治療開始後12週および48週までの抗MDA5抗体ELISAによる力価の推移をレトロスペクティブにRP-ILD改善群と呼吸不全死亡群に層別化して比較検討した.生存群,死亡群の2群間の比較はt検定を用いておこなった. 【結果】抗MDA5抗体陽性のRP-ILD 併発DM患者25例中14例(56%)でRP-ILDの改善を認めたが,11例は大量ステロイドと免疫抑制薬の2剤併用療法にも関わらず死亡した.11例中9例のRP-ILDは治療抵抗性で,全例,呼吸不全により12週間までに死亡した.2例でRP-ILDは改善したが,脳血管障害・悪性腫瘍の進行によりそれぞれ死亡した.抗MDA5抗体力価の12週あるいは死亡時までの変化率をRP-ILD改善群と呼吸不全死亡群に層別化すると RP-ILD改善群の力価の減少率は有意に高かった(79.7±10.2 vs. 67.4±17.4, P = 0.043).生存例および呼吸不全死以外の死亡例は最終観察時に,抗MDA5抗体の抗体価は正常化していた.寛解後に再発した1症例を認めたが,再発時には抗体力価の上昇を認めた.【結論】抗MDA5抗体力価の短期的な減少率はDM併発RP-ILDの治療効果判定/予後推定に有用である可能性が示唆された.また,長期的には,抗体力価が寛解・再発の指標となる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き,予定していた経気管支肺生検あるいは肺生検組織から凍結切片標本を作成し,免疫組織染色の手法を用いてMDA5,免疫グロブリン,補体(C3, C4)および免疫複合体の発現を検討することならびに臨床経過との関連の検討は,肺・皮膚組織の収集が達成できなかったために,解析に至らなかった.引き続き,今年度も鋭意,検体収集を努める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の予定テーマである1) 抗CADM-140/MDA5抗体陽性RP-ILD併発DM患者におけるMDA5, 抗CADM-140/MDA5抗体および 免疫複合体の病態への関与の検討および2) 抗CADM-140/MDA5抗体陽性RP-ILD併発DM患者におけ MDA5による末梢血T細胞の活性化および自己反応性T細胞の病態への関与の検討を引き続き,検体を収集して検討をおこなうとともに,平成29年度の予定テーマであるRP-ILD併発DM患者に対する新規治療法の試験的検討をおこない,臨床応用可能な有効な治療法をあきらかにすることを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年に予定していた肺,皮膚組織の収集が達成できなかったため,その検討に使用する蛋白解析および細胞分離のための試薬などに経費を使用しなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き,今年度も鋭意,検体収集を努める予定であり,研究遂行に必要である細胞培養関連試薬(培地,ウシ胎児血清,各種成長因子),蛋白解析試薬(各種標識モノクローナル抗体,EKISAキット),など費用の大半は消耗品に当てる予定である.
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