研究実績の概要 |
【目的】抗MDA5抗体は,皮膚筋炎(Dermatomyositis: DM),特に筋炎症状に乏しい皮膚筋炎(Clinically amyopathic DM: CADM)に見出され,急速進行性間質性肺炎(Rapidly progressive interstitial lung disease: RP-ILD)との密接な関連が知られている.本年度は,昨年度から引き続き,抗MDA5抗体陽性RP-ILDの予後と臨床症状ならびに治療開始後の短期的な抗体力価の推移について比較検討した. 【方法】抗MDA5抗体陽性のRP-ILD 併発DM患者25例(古典的DM 3例, CADM 22例)を対象として,臨床症状ならびに診断時/治療開始前と治療開始後12週/死亡時までの抗MDA5抗体ELISAによる力価の推移を生存群と死亡群に層別化して比較検討した.解析はχ2検定, 対応のないt 検定でおこなった. 【結果】抗MDA5抗体陽性のRP-ILD 併発DM患者25例中14例はステロイドパルス療法を含む大量ステロイドに多剤免疫抑制薬併用・免疫グロブリン大量静注療法などの併用で改善を認めたが,11例は治療抵抗性で死亡した.臨床症状については,生存群は死亡群と比較して有意に年齢が若く(50.7±8.1 vs. 60.6±6.3, P = 0.012),関節症状を併発していた(93% vs. 46%, P = 0.021).診断時/治療開始前の抗MDA5抗体の抗体価に両群間に有意差を認めなかったが(156.5±230.2 vs. 101.4±57.5, P = 0.42),12週あるいは死亡時の同抗体価は生存群で有意に低く(17.6±9.6 vs. 28.3±10.7, P = 0.035),抗体価減少率は生存群で有意に高かった(80.4±7.5 vs. 63.5±24.4, P = 0.029).【結論】RP-ILDを併発したDMの予後不良因子として関節症状に乏しい高齢者が抽出された.また,抗MDA5抗体の力価減少率はRP-ILD併発DMの治療効果判定や予後推定に有用である可能性が本年度も示唆された.
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