研究課題
関節リウマチ(RA)の発症機序を解明する前段階として、RAが寛解状態から活動性の再燃を示す際における臨床的・高感度画像的指標の推移と分子生物学的機序、および両者の関連を明らかにすることを目的とした研究である。生物学的製剤治療により寛解が半年以上持続しており、生物学的製剤の休薬を希望したRA患者を対象として、文書同意を得た上で平成29年度までに36例を登録した。休薬した生物学的製剤の内訳はインフリキシマブ6例、エタネルセプト10例、アダリムマブ3例、トシリズマブ6例、アバタセプト4例、ゴリムマブ5例、セルトリズマブ2例と全ての承認製剤が使用されていた。平成30年3月末時点で20例で再燃を認めたが、ほぼ全ての患者が同一製剤の再開を選択して速やかに寛解再導入に至っているため、臨床的にも本研究は安全に進められている。患者による関節毎の自覚症状のアンケート記入、医師による診察所見の記録と定期的な40関節の超音波検査が着実に施行され、血漿サンプルも平成30年5月1日時点で201検体が凍結保存されている。そのうちの111検体についてはMeso Scale Discovery社の超高感度測定キットを用いてIL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、TNF、IFNα、IFNγ、GM-CSF、VEGF、sTNFR1、sTNFR2、sIL-6Rの濃度測定が完了している。再燃に伴い2種類のサイトカインが増加すること、一部の生物学的製剤ではベースラインのデータに特徴的所見が見られることが判明している。本研究はRAの病態解明につながるのみならず、医療経済を考慮した今後のRA治療指針にも重要なエビデンスを提供することが期待できる。
2: おおむね順調に進展している
再燃率40%の予測で50例の登録を目標としていたが、平成29年度で36例を登録した時点で20例に再燃を認めたため、再燃に関する解析は十分と判断して登録を終了とした。サイトカイン測定も半数以上の検体で測定が終了している。
新規の患者登録は終了し、20例が再燃で観察終了、3例が再燃せず2年間の観察を終了、2例が通院中止による脱落となったたため、残る11例の登録患者の経過観察を継続しながら、保存血漿サンプルの解析を進めて行く。
主に血漿サンプルのサイトカイン測定のためのキット購入に充当しており、非再燃で経過観察中の患者のサンプルは同一患者の同時測定を原則とするために凍結保存のままとしている。従って今年度も100以上の検体を測定する必要があるために一部の使用を次年度に回すこととなり、平成30年度に100以上のサンプルについてサイトカイン測定を行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)
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