研究課題/領域番号 |
15K09540
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
向井 知之 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (00454421)
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研究分担者 |
守田 吉孝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (50346441)
佐藤 稔 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70449891)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / Tankyrase / SH3BP2 / 骨代謝 / 自己免疫疾患 / 全身性エリテマトーデス |
研究実績の概要 |
本研究は、Poly(ADP-ribose)polymeraseであるTankyrase、およびTankyraseにより発現が調節されるアダプター蛋白SH3BP2(SH3 domain binding protein 2)に着目し、それらの蛋白の破骨細胞・炎症性骨破壊・自己免疫性疾患における役割の解明を目的としている。 まず、破骨細胞分化におけるTankyraseの役割を検討した。マウス骨髄由来マクロファージおよび前破骨細胞株RAW264.7細胞を用い、Tankyrase阻害薬存在下に破骨細胞分化を誘導した。Tankyrase阻害薬はRANKLおよびTNF誘導性の破骨細胞分化・活性化を著明に亢進することが明らかとなった。細胞を用いた一連の解析から、Tankyrase阻害薬はSH3BP2の発現亢進を介して、破骨細胞分化に重要なNFATc1の核内移行を誘導していることが分かった。それら結果は、Tankyarseが破骨細胞分化の新規調節因子であることを示しており、臨床面においては骨粗鬆症・関節リウマチなどの骨量減少性疾患における新たな治療ターゲットになり得ることを示唆している。また、Tankyrase阻害薬はWnt/β-catenin阻害作用を有していることから、大腸癌などにおける抗腫瘍効果が期待されており、臨床応用に向けた研究が進められている。本研究の結果はTankyrase阻害薬の骨量減少という全身副作用の可能性を示唆しており、臨床応用時の副作用管理の重要性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「(A) 関節炎モデルの骨破壊・免疫異常におけるSH3BP2の役割」を検討するため、現在までに関節炎モデルマウスとしてヒトTNFトランスジェニックマウス、IL-6受容体gp130変異関節炎マウスを用いて関節局所のSH3BP2発現を評価した。SH3BP2の発現は関節局所においては非関節炎マウスと比して著変無いことが分かり、今後リンパ組織における発現パターンの評価を予定している。 「(B) 生理的骨代謝及び炎症性骨破壊におけるTankyraseの役割」を検討するため、Tankyrase阻害薬を用いて破骨細胞分化、および骨芽細胞分化におよぼす影響を評価した。現在までのところ、Tankyrase阻害薬は破骨細胞分化・活性化を著明に亢進することを明らかにした。一方、骨芽細胞分化においては大きな変化を及ぼさなかった。続けて、Tankyrase阻害薬のin vivo作用を調べるために、Tankyrase阻害薬の全身投与実験を開始した。現在、Tankyrase阻害薬の投与量・投与経路に関する予備実験を行っている。 「(C) 全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスにおけるSH3BP2の役割」を検討するため、SLEモデルマウスであるB6-FaslprマウスとSH3BP2機能獲得変異マウス(Sh3bp2P416R/+マウス)の交配を開始した。観察対象の2重遺伝子変異マウスを作成し現在4ヶ月齢まで観察している。B6-Faslprマウスは、9ヶ月齢以降に皮膚病変やリンパ節腫脹などの病変を呈してくるため、現在Sh3bp2遺伝子変異がどのようにSLE病変に影響するかを注意深く観察している。
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今後の研究の推進方策 |
マウス初代培養細胞を中心とした解析を順調に遂行できており、今後マウスを用いたin vivo解析を進めていく予定である。 「(A)関節炎モデルの骨破壊・免疫異常におけるSH3BP2の役割」の検討として、現在までに関節炎モデルマウスであるヒトTNFトランスジェニックマウス、IL-6受容体gp130変異関節炎マウスの解析を行い、臨床的及び組織学的解析手法を確立した。今後、SH3BP2をターゲットとしたsiRNAの投与を行い、その抑制による治療効果を解析する予定である。 「(B)生理的骨代謝及び炎症性骨破壊におけるTankyraseの役割」の検討として、現在までのところTankyrase阻害薬を用いて細胞レベルでのTankyraseの役割を明らかにしてきた。今後、in vivoにおける役割を解析するため、薬剤の投与方法を確立し、生理的状態および骨粗鬆症・関節炎などの病的状態におけるTankyraseの役割を評価していく。また、Tankyrase阻害に加えてTankyrase活性化の影響を検討するため、ウイルスベクターを用いて、Tankyrase過剰活性化の破骨細胞培養系への影響を検討する予定である。 「(C)全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスにおけるSH3BP2の役割」を解析するため、観察対象の2重変異マウス(Sh3bp2P416R/+ / Faslpr/lprマウス)を既に作成しており、現在皮膚病変・尿蛋白の経時的評価を行っている。今後12ヶ月齢を目途に解剖し、リンパ節・腎臓・肺、等の組織学的解析を行う。また、解剖時にはリンパ組織中のリンパ球サブセットの解析を行う。更に、経時的に回収した血清を用いて、自己抗体価を測定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの交配がスムーズに進まず、二重改変マウスの作成に若干の遅れが生じた。マウスのin vivo解析に使用する抗体等の購入時期が遅れた関係で、予算の一部を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスのin vivo解析に使用予定であった、抗体、プライマー、関連試薬の購入に充てる予定である。
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