研究課題
本研究のメインテーマは、喫煙の関節リウマチ(RA)における生物学的製剤(とくにTNF阻害剤)の治療効果への影響(効果減弱)についての分子メカニズムを解明することである。TNFの炎症作用は、主として転写因子NF-Bを介したものであることは周知の事実であるが、最近、喫煙物資がダイオキシンレセプター(AhR)を介してNF-kBを活性化し、炎症を惹起するとの報告があった。このことから、TNFとAhRシグナルにはクロストークがあり、喫煙習慣(+)のRA患者では、TNFによるNF-kB活性化の増幅があるのではないかとの発想に至った。当初の計画どおり、初年度(平成27年度)は、RA患者由来の滑膜細胞株(MH7A)を用いてin vitroでTNF、喫煙物質(AhRアゴニスト,Benzopyrene(BP))による共刺激で炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1b)産生が増幅するかどうかを検討した。その結果、TNFとBPによる共刺激によりそれぞれの単独刺激より有意にIL-6、IL-1bの産生が増幅されることを実証した。現在、IL-6、IL-1bの増幅がNF-kBの活性化の増幅を介したものかどうかを検討中である。また、禁煙によるTNF阻害剤の効果復元の検証であるが、当初、禁煙介入の有無による群間比較試験を計画していたが、薬物治療を固定する必要があり、倫理的に困難と考え、まず、個別症例において縦断的解析を検討することにした。
2: おおむね順調に進展している
RA由来滑膜細胞株を用いてTNFと喫煙(AhR)シグナルの共刺激により、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1b)産生が増幅することを確認した。この結果は、これらの2つのシグナル間にクロストークが存在する可能性を強く示唆する有力な情報となった。一方、禁煙によるTNF阻害剤の効果復元の検証であるが、禁煙介入による群間比較試験は現実的な観点から変更し、個別症例において縦断解析を行うこととした。以上より、平成27年度の進捗状況について70%と評価する。
まず、TNFと喫煙(AhR)シグナルの共刺激による炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1b)産生の増幅がNF-kBを介したものであることを実証する。また、当初の計画どおり、TNF阻害剤治療抵抗性におけるAhR遺伝子変異との関連をSNP解析により検討する。禁煙によるTNF阻害剤の効果復元の検証については、個別症例において縦断解析を行う。
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