研究課題
本研究のメインテーマは、関節リウマチ(RA)における喫煙による生物学的製剤(とくにTNF阻害薬)の効果減弱の分子メカニズムを解明することである。我々は、分子メカニズムのひとつとして、TNFaによる炎症シグナルの主流であるNF-kB活性化において喫煙シグナル(AhR:arylhydrocarbon receptor シグナル)とのクロストークによるNF-kB活性化の増幅、さらには、増幅されたNF-kBにより誘導される炎症物質(炎症性サイトカインなど)の産生過剰が生じるためとの仮説を下にその実証実験を行った。昨年度、RA患者由来の不死化した滑膜細胞株(MH7A:キッセイ薬品・理研より供与)を用いてTNFaとAhRアゴニストによる共刺激で、それぞれの単刺激に比べ、RAにおける炎症の主役であるIL-1bやIL-6などの炎症性サイトカインの産生が増幅されることを示した。この成果は、2017年3月、第4回International Congress on Controversies in Rheumatology & Autoimmunity (Bologna, Italy)で発表した。さらに、MH7A細胞を用いて、TNFaとAhRアゴニストによる共刺激で、NF-kBの活性化が増幅されることをWestern blotting法でリン酸化したNF-kBを半定量し確認した。現在、その再現性とAhRアンタゴニストによるNF-kB活性化増幅の抑止について検討、確認している。この結果を待って、成果をまとめ論文化する予定である。また、これらの成果は、AhRアンタゴニストのRAにおける治療への介入の可能性を示唆するものと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
TNFaシグナルと喫煙シグナルとの共刺激で、NF-kB活性化の増幅とNF-kBにより誘導される炎症物質(炎症性サイトカインなど)の産生過剰を実証することができた。これは、上記2つのシグナルの間にクロストークが存在することを示唆する結果であり、これまでに類似の報告はみられない。この2つのシグナル間のクロストークの存在が喫煙シグナルによるTNF阻害薬効果減弱の分子メカニズムのひとつであることを明らかにした。
AhRアンタゴニストによるNF-kB活性化増幅抑止実験を行い、AhRアンタゴニストの治療への介入の可能性を検討する。この成果は、RAにおける新規の治療薬の開発に繋がる可能性がある。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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