研究課題/領域番号 |
15K09549
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
若原 恵子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (00631433)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / 好塩基球 / 好酸球性炎症 |
研究実績の概要 |
これまでに我々は、マウスアレルギー性気管支喘息モデルにおいて、喘息マウス肺で炎症性樹状細胞や好塩基球数が増加すること、またこの炎症性樹状細胞や好塩基球を卵白アルブミンで感作したマウスに移入すると、好酸球性気道炎症の増悪を引き起こすことを示し、炎症性樹状細胞や好塩基球がアレルギー性気道炎症の増悪因子である可能性を示してきた。 本研究では、ヒトにおける気管支喘息の重症化と炎症性樹状細胞、好塩基球の関連を調べるため、はじめに喀痰中好塩基球および炎症性樹状細胞のフローサイトメトリー法による解析法を確立した。次に、外来通院治療中の中等症持続型以上の気管支喘息患者に対して誘発喀痰を行い、喀痰中好塩基球数および活性化マーカーの発現を検討し、以下の結果を得た。 (1)気管支喘息患者では、健常者群と比較して有意に喀痰中好塩基球数の増加が認められた。(2)喀痰中好塩基球数は、喀痰中好酸球数、呼気一酸化窒素濃度と正の相関を認めた。(3)喀痰中好塩基球数は末梢血中好塩基球数、血清総IgE値とは相関を認めなかった。(4)喀痰中好塩基球では、末梢血中好塩基球と比較し、活性化マーカーであるCD203cが有意に上昇していた。以上の結果より、ヒトの喘息病態においても、好塩基球の気道への浸潤が好酸球炎症と関連している可能性が示された。 今後、炎症性樹状細胞についても同様の検討をすすめるとともに、炎症性樹状細胞と好塩基球、Th2細胞の病態形成、修飾への関与についても調べる予定である。 また、現在環境整備中であるが、マウス喘息モデルを使用し好塩基球と炎症性樹状細胞の気道炎症発症、増悪メカニズムの検討も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では炎症性樹状細胞と好塩基球を軸に気管支喘息発症・増悪のメカニズムを解析することを目的に(1)マウスモデルを使用した細胞学的な検討と、(2)ヒト臨床検体を用いた検討を行う予定としていた。マウスモデルの検討については、学内動物施設の手続き、動物購入の手続き等、当初の見込みより時間がかかり、現在も環境整備を続けている状況であり、実験の進捗は当初の予定より大幅に遅れている。しかしながら、ヒト臨床検体での検討については、当初の計画を大幅に上回る研究成果が得られ、さらに新たな研究への可能性も見出されており、総合的には概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
マウスモデルを使用した実験に関しては、今後も環境整備を継続し、実験継続を試みる。 ヒト検体を使用した検討については、喘息患者喀痰中の炎症性樹状細胞数およびフェノタイプを解析し、好塩基球数および好酸球性炎症との関連を検討する。 さらに、これまでの検討から、気管支喘息の局所で認められる好塩基球と末梢血中好塩基球ではフェノタイプが異なる可能性が示された。気道局所でみられる好塩基球が、アレルギー性気道炎症治療のターゲットとなりうる"病原性好塩基球"であるという可能性を視野に入れ、次の検討を計画した。 (1)気管支喘息患者における末梢血中好塩基球と気道局所好塩基球の表面マーカー発現の検討。特に、マウスでその存在が示されているIL-3誘導性好塩基球とTSLP誘導性好塩基球のヒトでの相同細胞を視野に入れ、IL-33のレセプターであるST2、TSLPのレセプターであるTSLPRを中心に発現を検討する。(2)難治性気管支喘息に合併し、好酸球および好塩基球が病態形成にかかわるとされている好酸球性副鼻腔炎/鼻茸局所の好塩基球の表面マーカーの検討を行い、"病原性好塩基球"の存在の有無を明らかにする。(3)末梢血中の好塩基球を各種サイトカイン、抗IgE抗体で刺激することで、気道局所中にみられる好塩基球と同様のフェノタイプが作れるどうか検討する。
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