これまでに本研究においてはヒト喘息病態において好塩基球および炎症性樹状細胞が喘息病態に関わる意義について検討を重ねてきた。前年度までの検討において、喘息患者の誘発喀痰をフローサイトメトリーで解析し、気管支喘息の患者においては喀痰中好塩基球が増加していること、炎症性樹状細胞であるSIRPα+樹状細胞が増加していることを確認した。喀痰中好塩基球は喀痰中好酸球数と有意な正の相関を認めたが、炎症性樹状細胞にはその傾向はみられなかった。 そこで、喀痰中好塩基球のフェノタイプについて、同一患者の末梢血好塩基球との比較を行い、喀痰中好塩基球は末梢好塩基球と比較して活性化しており、活性化マーカーであるCD203cやCD63の発現が高値であることが示された。さらに、喀痰中好塩基球数が増える病態について、炎症フェノタイプという点から検討すると好酸球性炎症(好酸球数>2%、好中球数<60%)と有意な相関を認め、混合性炎症(好酸球数>2%、好中球数>60%)とは有意な相関を認めなかった。以上のことは好塩基球が増加する特定のフェノタイプ、病態生理が存在する可能性を示している。さらに、好塩基球と副鼻腔炎との関連について検討すると、副鼻腔炎の中でも篩骨洞の炎症と好塩基球が強く相関していることが明らかとなった。 以上のデータに基づき、特にバイオ製剤の治療ターゲットのマーカーとしての好塩基球の可能性を調べるために、抗IL-5抗体治療の末梢血および喀痰中好塩基球に対する影響について検討した。これまでのところ5症例の検討であるが、抗IL-5抗体は、末梢血および喀痰中の好酸球および抗塩基球数を著明に減らした。以上の知見は「IL-5ー好塩基球ー好酸球」の関連を示唆するが、その詳細なメカニズムは今後の検討が必要である。
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