研究課題
2015年度は、まず、中枢神経ループスについて、特にその重症病型であるacute confusional stateにおいて、抗Sm抗体がその発症に関与すること、さらにその抗体も中枢神経内での産生でなく脳血液関門の障害により脳内に侵入することを確認した。また、acute confusional stateを中心とするびまん型の中枢神経ループスにおいては、髄液中のC3aやC5aの上昇が見られることから、補体と脳血液関門障害の関連があることを明らかにした。実際に髄液中のC5aは脳血液関門の指標であるQ albuminと正の相関を示すことを証明した。さらに、acute confusional stateに於いては、血清のC5aも上昇していたが、Q albuminとはむしろ負の相関を示した。これは、脳血液関門の破壊に際してC5aが消費されるためではないかと考えられた。この点については今後もさらに検討してゆく予定である。一方、これまで抗クルタミン酸レセプター抗体(抗NMDA受容体抗体)の中の抗NR2抗体が中枢神経ループスの病態形成上重要であることを見出してきたが、当該年度の研究においてはNMDA受容体の別のサブユニットであるNR1サブユニットに対する自己抗体が中枢神経ループスの血清と髄液において増加していることを見出した。加えて、この抗体が認識するエピトープの配列についても明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、中枢神経ループスにおいて、脳血液関門の障害において血清及び髄液のC5aが関与している可能性があることを突き止めることができたため。
今年度の研究成果をうけて、次年度以降、中枢神経ループスにおけるC5aの変動の機序について、特に自己抗体の果たす役割を解析するという明確な目的の設定ができた。
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