研究課題
2017年度はまずループス精神病(diffuse NPSLE)における脳血液関門の異常がいかにして生じるかを明らかにするために、血清中の種々の自己抗体と脳血液関門の機能の関係を検討した。自己抗体としては、抗Sm抗体、抗RNP抗体, 抗NMDAR-NR2抗体, 抗リボソームP抗体、抗カルジオリピン抗体について、脳血液関門の指標であるQ albuminとに相関について検討した。NPSLE患者101名についての検討の結果、単回帰分析においても重回帰分析においても、血清抗Sm抗体のみがQ albuminと相関した。抗Sm抗体は脳血液関門の障害の著明なacute confusional stateで上昇していることが多く、本抗体がNPSLEにおける脳血液関門の障害に最も貢献していることが明らかになった。次に抗Sm抗体がいかにして脳血液関門を障害するかを明らかにするために、抗Sm抗体と抗RNP抗体がヒト単球の炎症性サイトカインの産生に及ぼす影響について検討した。マウスのモノクローナル抗RNP抗体は単独で単球のIL-6産生を増強したが、抗Sm抗体単独では増強効果をはっきりしなかった。しかしながら、抗RNP抗体の存在下においては、抗Sm抗体は著明に単球のIL-6産生を増強した。抗Sm抗体と抗RNP抗体の増強効果は相乗的効果を示した。さらに抗Sm抗体と抗RNP抗体は単球のIL-6のmRNAの発現を相乗的に増強した。これらの抗Sm抗体と抗RNP抗体の相乗的増強効果は、モノクローナル抗体でなく、患者の血清から精製した抗体を用いても同様の効果が見られた。また、TNFについても同様の増強効果が認められた。これらの結果から、抗Sm抗体は抗RNP抗体の存在下に単球の炎症性サイトカインの発現を上昇させることにより、脳血液関門の障害をきたすものと考えられた。
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Clin Exp Rheumatol
巻: 36 ページ: 印刷中
Arthritis Rheumatology
巻: 70 ページ: 277-286
10.1002/art.40356.