研究課題/領域番号 |
15K09558
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岡山 吉道 日本大学, 医学部, 准教授 (80292605)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 関節リウマチ / 滑膜マスト細胞 / サブスタンスP / MrgX2 |
研究実績の概要 |
[目的]関節リウマチ(RA)患者と変形性関節症(OA)患者の滑膜組織におけるマスト細胞がサブスタンスP(SP)を産生するかを検討し、滑膜マスト細胞からのSP産生の機序の解明と滑膜マスト細胞におけるSPの責任受容体を同定することを目的とした。[方法] RAとOA患者の滑膜組織より滑膜マスト細胞を分離し、その細胞を10週以上培養し、培養滑膜マスト細胞を樹立した。RAとOA患者の滑膜組織を用いて免疫組織化学染色を行い、共焦点顕微鏡で観察した。遺伝子発現は定量的RT-PCR法、タンパク質の発現はFACSやELISAで測定した。レンチウィルスベクターを用いたshRNA法によりMrgX2遺伝子発現を抑制した。 [結果] RAとOA患者の滑膜マスト細胞はSPを発現していたがその陽性数や全マスト細胞における頻度には有意差はなかった。しかし、SPの染色パターンが異なり41%のRAのマスト細胞では細胞膜周辺に93%のOAのマスト細胞ではでは細胞質全体に局在した。この局在の違いは脱顆粒像の有無であった。FcepsilonRIの架橋および凝集IgG刺激でマスト細胞は刺激4時間後にTac1 mRNAが上昇し細胞内SPは増加したが、細胞上清中のSPはマスト細胞から同時に分泌されるproteaseによって分解された。また、滑膜マスト細胞のSPの受容体はNK-1RでなくMrgX2であった。[結論]滑膜マスト細胞はFcgammaを介する刺激によってSPを合成し、マスト細胞周囲の局所で遊離されたSPはauto/paracrineの機序でMrgX2を介して滑膜マスト細胞を活性化し、炎症を増強することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関節リウマチ研究はおおむね順調に進展している。関節リウマチ(RA)患者と変形性関節症(OA)患者の滑膜組織におけるマスト細胞がサブスタンスP(SP)を産生するかを検討し、滑膜マスト細胞からのSP産生の機序の解明と滑膜マスト細胞におけるSPの責任受容体を同定した。MrgX2の発現増強機序の検討は進行中であるが、線維芽細胞を慢性蕁麻疹の患者から入手し繰り返し結果の確認をとる必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
substance Pは、11個のアミノ酸からなるペプチドであるが、やはり11個のアミノ酸からなるhemokinin1と6個のアミノ酸が同じであり、免疫組織化学染色に使用する抗substance Pモノクローナル抗体が、hemokinin 1と交差する可能性があり、交差性を検証する必要がある。ただし、滑膜マスト細胞はsubstance PをencodeするTAC1 (tachykinin 1) をFcepisilonRIの架橋刺激にて発現増強するが、hemokinin 1をencodeするTAC4の発現は極めて低くFcepsilonRI架橋刺激で発現の増強はなかった。マスト細胞から遊離されるsubstance P量は、substance PのEIAでの測定だけではなく、hemokinin 1のELISA (この抗体はsubstance Pとの交差反応はない)を用いてhemokinin 1量を測定する必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
27年度学会旅費予算として300,000円を計上していたが、実際は27年度学会旅費を他の研究費で支払ったため当該研究費において27年度学会旅費の実支出額が0円となった。そのため次年度使用額として202,704円が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
28年度においては今後の推進方策に述べたようにhemokinin 1とsubstance Pの測定を予定しておりそれぞれの測定キットが100,000円前後しており、これらの測定キットを購入するため28年度の物品費にこの次年度使用額を充てる予定である。
|