研究課題
細菌感染症に対する抗生物質による治療は、耐性菌誘導という問題を含有する。以前、我々の研究グループは動物のグラム陽性菌感染症に対する光線力学的療法による殺菌的効果を示した。さらに、光増感剤を併用することによりグラム陰性菌への応用が期待される。そこで、多剤耐性菌を誘導する可能性がある抗生物質に頼らない光線力学的抗菌療法の開発を目的として本研究を行った。胃癌発生の危険因子である、グラム陰性菌のHelicobacter pylori(以下ピロリ菌)に対する現在の治療として多剤併用抗菌療法が行われる。この治療によって、ピロリ菌を含めた腸内細菌の耐性化の問題が解決されていない。胃のピロリ菌感染症の診断には上部消化管内視鏡検査が必須であるが、このときに内視鏡を用いて光線力学的抗菌療法によってピロリ菌を除菌できれば、一度の治療ですみ、抗菌薬を使用しないので耐性菌を誘導することもない。そこで、我々はピロリ菌を除菌する内視鏡を用いた光線力学的抗菌療法を開発することにした。はじめはポルフィリン誘導体を増感剤に用いる検討を行っていたが、薬事の承認を得るためには資金が必要であるので、保険適応の薬剤(メチレンブルー)に添加物を加えた増感剤を用いることに方法を変更した。マウスを用いた検討を行うために、LED照射装置を作って検討を重ねている。In vitroでは添加物を加えたメチレンブルーによる光線力学化学療法は様々な菌を殺菌できた。ピロリ菌のマウスモデルは、消化管の雑菌の増殖が強いために研究が難航している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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