研究課題/領域番号 |
15K09566
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
長野 則之 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (00747371)
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研究分担者 |
小穴 こず枝 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (60115334)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | B群レンサ球菌 / 薬剤耐性 / PRGBS / 莢膜多糖体遺伝子クラスター / 血清型 |
研究実績の概要 |
新生児及び高齢者の重篤感染症治療の第一選択薬であるペニシリン系薬に低感受性を示すB群レンサ球菌(PRGBS)株が、同一医療機関で遺伝的に同じクローンに属しながらも莢膜多糖体血清型の経時的な変化をみせたことから、菌株のゲノム解析により本菌の病原因子且つワクチン標的物質でもある莢膜多糖体遺伝子クラスターの遺伝子組み換え(capsular switching)が本事象に果たす役割の解明を主要な目的とした。本年度は免疫学的手法で血清型別が困難であったPRGBS株について、multiplex PCRにより血清型を決定した。さらに高分子量ペニシリン結合蛋白(PBPs)に同一のアミノ酸置換を有するsequence type 1の血清型Ia及びIIIの株を対象に高速シークエンサーによるゲノムDNAのマッピング解析を実施した。莢膜多糖体遺伝子クラスターの塩基配列を収集・精査した結果、cpsY-cpsA-cpsB-cpsC-cpsD-cpsE-cpsF並びにcpsK-cpsL-neuB-neuC-neuD-neuAの各遺伝子の相同性は>99%であった。また、血清型による多様性を示すcpsGと血清型Iaの莢膜多糖体決定領域であるcpsHの相似度は50~55%で、これまで確認されている血清型IaとIIIの相応領域の相似度26%より高かった。さらには興味深いことに莢膜多糖体血清型IIIの決定領域であるcpsIとcpsJの相似度は>98%と極めて高値であった。莢膜多糖体遺伝子クラスターの周辺領域の検索では2株共に、neuAの下流9.9kb中遠位約7.3kbの配列がStreptococcus agalactiae A909株(血清型Ia)と一致し、近位の約1.4kbの配列がStreptococcus agalactiae NEM316株(血清型III)と一致していることを明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の計画のうち重要なPRGBS代表株のゲノムDNAのマッピング解析を先行して実施している。さらに、血清型IaとIIIの株の間で莢膜多糖体遺伝子クラスターの塩基配列の比較解析に着手できており、知見が得られていることから計画よりやや遅れているが研究は進んでいるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請した研究計画に基づいて高速シークエンサーで解析した2株について莢膜多糖体遺伝子クラスターとその周辺領域に見出されている配列の隙間(ギャップ)のPCRシークエンシングによる配列取得解析を進め、血清型の変化事象のエビデンスの有無を探究する。さらにはその他のORFの探索によりPRGBS株の保有する病原因子についても解析を進めていく。また、血清型Ib型のセフチブテン耐性PRGBS(CTBrPSGBS)株からPRGBS株への進展の可能性についても探究していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノム配列解析において、重要株を先行して解析し、その結果に基づき後の解析を行うことが妥当と考えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度請求額と合わせて、現在解析対象の2株のゲノム配列の隙間(ギャップ)のPCRシークエンシングによる配列取得および他の株を対象に効率よくゲノム解析を行うのに使用することを計画している。
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