研究課題/領域番号 |
15K09569
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高橋 悦久 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 特任助教 (10380065)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インフルエンザ / クラリスロマイシン / 免疫記憶 / 再感染 / 宿主プロテアーゼ / サイトカイン / ケモカイン / ノイラミニダーゼ阻害剤 |
研究実績の概要 |
インフルエンザの治療にはノイラミニダーゼ阻害剤であるタミフル、リレンザ、イナビル等がよく使用されている。これらの薬剤はウイルス増殖を抑制して症状を改善するが、その反面、獲得免疫の感染メモリーの低下を引き起こす。本研究では、免疫増強作用を有するマクロライド剤のクラリスロマイシン(CAM)を抗インフルエンザ薬のタミフルと併用し、生体内における反応を見た。インフルエンザ感染及びCAM投与でBAFFレセプターの発現増加は認められなかった。T細胞依存経路の解析でサイトカインの産生が関わっていることから、シグナル伝達経路のSTAT3のリン酸化と、宿主プロテアーゼのMMP-9の産生を調べた。STAT3のリン酸化は検出されなかったが、MMP-9についてはCAM投与群で発現の低下が認められた。 抗インフルエンザ薬とCAMの併用で再感染率の低下を検証する目的として、初感染の1000倍及び2000倍のウイルスを初感染から6ヶ月後、10ヶ月後に感染させた。再感染から6日後に肺洗浄液、肺、肺縦隔リンパ節から細胞を分離し、CD8+なメモリー細胞の中で、エフェクターメモリーT細胞とセントラルメモリーT細胞の割合をフローサイトメーターを用いて解析した。その結果、CAM投与群でこれらのメモリー細胞が増加傾向であった。より明確にするために再感染時期を初感染から2ヶ月後に設定し、現在投与を開始している。更に、再感染2、4、6日後のサイトカインとケモカインの発現をRT-PCRを用いて解析したところ、感染2日後から免疫細胞の活性化に関与するケモカイン群がCAM投与により有意に増加することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クラリスロマイシン(CAM)による免疫増強効果のメカニズム解析で、T細胞非依存経路について、BAFF受容体の発現には影響を与えないことを明らかとした。また、T細胞依存経路についてSTAT3の経路は関与していないと考えられるが、宿主プロテアーゼであるMMP-9の発現低下を見いだした。このことは、第22回マクロライド新作用研究会、第20回日本病態プロテアーゼ学会学術集会において口頭及びポスター発表をした。 免疫メモリーの解析は感染ウイルス量と再感染の時期の検証が終わりつつある。サイトカイン、ケモカインの解析も順調に進んでおり、サンプル数が少なく有意差検定が出来ていない物に関しては数を増やしている。 以上の理由から、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
免疫メモリーの解析で、平成27年度に行った至適濃度・至適時期の検証から、ウイルス濃度は初感染の2000倍、再感染の時期を2ヶ月後に設定し、肺、縦隔リンパ節、脾臓からリンパ球細胞を分離し、フローサイトメトリーを用いて免疫細胞の分布を解析する。血液、肺洗浄液、鼻腔洗浄液中のインフルエンザ特異抗体はELISA法を用いて再感染前後に測定する。更に、分離した細胞からRNAを抽出し、免疫記憶に関係する遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRにより検出する。また、クラリスロマイシンの抗菌作用の無い誘導体を用いて、同様の効果の有無を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度3月納品となり、支払いが完了していないため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度4月に支払い完了予定である。
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