研究実績の概要 |
インフルエンザの治療で使われるタミフル、リレンザ等のノイラミニダーゼ阻害剤の負の作用として獲得免疫の低下が引き起こされる。その結果、免疫メモリーが低下し再感染の危険性が増す。これまでの研究でマクロライド剤のクラリスロマイシン(CAM)は免疫増強作用を有し、抗インフルエンザ薬のタミフルとの併用で再感染率が低下した。本研究期間ではマウスにインフルエンザウイルス(PR8)に感染させて生体応答を調べた。感染と同時にCAMの投与を開始すると、感染初期から単球走化性タンパク質(MCP-1)とMMP-9の発現誘導を有意に抑制することが明らかとなった。炎症性細胞の浸潤や基底膜を構成するタイプ4コラーゲンの分解による血管透過性亢進に関与すると考えられる。肺と心臓の組織切片作製し、HE染色とエバンスブルー漏出で評価した。その結果、CAM投与群で炎症性細胞の浸潤が抑制され、血管透過性亢進が抑制された。以上についてComparative Immunology, Microbiology and Infectious Diseases(Volume 56, February 2018, Pages 6-13)に報告した。 一方で、マウスをモデルとしたCAMの投与量についての検討は行っておらずヒトに合わせた投与量では、効果が低くメモリー細胞の評価は難しかった。本研究期間では、1回の投与量を増やしてウイルス特異抗体を測定した結果、ヒトの投与量の2倍量を投与することで抗体産生量に増加傾向が認められた。CAMから抗菌作用を除いた誘導体においても同様の効果が得られると考えられ、今後の免疫メモリーの解析に有効である。
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