研究実績の概要 |
症例は2014年1月から2016年12月までの2年間に血液疾患のために当院で骨髄液や腫瘍組織中の細胞表面マーカー検索を実施した症例277例。血液悪性疾患の診断はWHO分類(2008)に基づいて診断した。全症例277例中、女性119例、男性158例で、年齢の中央値は58歳(1~93歳)であった。基礎疾患の別では、全症例中血液悪性腫瘍性疾患ありが167例(60.2%)、なしが110例(39.8%)であり、血液悪性腫瘍性疾患なしの症例群をコントロール群として以下の解析をすすめた。全症例156例(骨髄液66例、腫瘍組織90例)において、観察期間内の死亡イベントは20例(12.8%)であり、骨髄液群と腫瘍組織群にそれぞれ10例ずつであった。血液腫瘍性疾患において骨髄液中と腫瘍組織中のリンパ球分画の割合が生存に及ぼす影響を多変量解析で比較したところ、骨髄液中のリンパ球分画の中で有意に生存に寄与する細胞成分はみられず、年齢だけが唯一の寄与因子であった(P<0.0001)。また腫瘍細胞中のリンパ球分画のうち、ヘルパーT細胞とB細胞が有意に生存に影響していた(それぞれP=0.0243,0.0143)。年齢は有意な要因ではなかったが(P=0.5655)独立因子として強制投入した。統計学的に有意な関連がみられたリンパ球分画、ヘルパーT細胞とB細胞で、その対象細胞成分が中央値より多いか(+)少ないか(-)の二群比較生存曲線を描画したところ、腫瘍細胞内のヘルパーT細胞(Th)が多い群(+)では少ない群(-)に比較して、また腫瘍組織内のB細胞(B)が多い群(+)では少ない群(-)に比較して有意に全生存が長かった。腫瘍組織局所の免疫状態はがん種によって異なると考えられた。血液悪性腫瘍においては、腫瘍組織において正常のヘルパーT細胞やB細胞の浸潤が予後に関連している可能性が考えられた。血液悪性腫瘍のより細かい疾患別に、生存に寄与できる分画がないかを再解析する意義がある。
|