研究課題/領域番号 |
15K09572
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
柳原 克紀 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40315239)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロバイオーム / 肺炎 / dysbiosis / 高齢者 |
研究実績の概要 |
高齢者肺炎の発症には宿主免疫との関連が重要である。臨床研究を円滑に進めるためには、マイクロバイオームを基礎研究で明らかにすることが必要と判断した。細菌叢と宿主防御との関連について、実験動物を用いて多面的に解析を進めた。マウスに抗菌薬を内服させたのち、盲腸内容物の細菌叢のメタゲノム解析を行ったところ、抗菌薬非投与群と比較して、有意な細菌叢構成の変化(dysbiosis)が観察された。また、腸管に発現するReg3タンパクなどの抗菌ペプチド発現量も抗菌薬投与群で変化が見られた。一方、遠隔臓器である肺の抗菌ペプチド発現量にも変化が見られ、肺局所の細菌叢にもdysbiosisが観察された。抗菌ペプチドの発現ならびにdysbiosisの誘導は、外界からの侵入微生物に対する抵抗性に影響する可能性があり、呼吸器感染症の発症の関連が示唆された。これらのデータは、高齢者肺炎患者の臨床検体を用いたマイクロバイオーム解析に重要な示唆を与えるものである。 平成30年度に実施する臨床研究のプロトコール確立に役立てたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を遂行するために必要な技術の習得や基礎データの蓄積は、予定通り進んでいる。臨床研究を着手するためには、どのような患者情報を取得するかが重要であり、プロトコールの確定に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
長崎市内の老健施設において、文書同意を取得後、70歳以上の入所者200名からの舌背ぬぐい液および糞便を採取する。尚、担癌患者、自己免疫疾患患者、ステロイドあるいは免疫抑制剤治療中の患者はマイクロバイオームに影響を与える可能性があるため、除外する。 研究計画は下記のように進める。1.高齢者施設入所者200名からの舌背ぬぐい液および糞便の採取、2.検体からのDNA抽出および16S遺伝子解析による菌種・菌種組成解析、3.肺炎発症群におけるマイクロバイオームの特徴やdysbiosisに関して明らかにする。 肺炎発症群においては、以下の臨床データをカルテベースで登録し、詳細な解析を実施する。同意取得日、性別、体重、生年月日(年齢)、入院・外来区分、基礎疾患・合併症(有無、疾患名・症状名、感染症との関係 )、アレルギー歴、既往歴、血管内治療の有無、誤嚥の有無、使用抗菌薬(薬剤名、投与期間、)、肺炎の重症度(A-DROP、PORTスコア)、細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別、PS、経管栄養の有無など
また、今までの基礎研究においてわかってきたプロバイオティクスの影響や抗菌ペプチドの有無に関しても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成30年度から実施予定の高齢者肺炎の研究において、多額の経費が必要である。そのため、予備研究は別予算で賄った。 (使用計画) 平成30年度は多数の患者検体を解析する必要があり、繰り越し分も含め全額使用する予定である。
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