研究課題
高齢者肺炎の病態を解明する目的で、上気道マイクロバイオームの探索を実施した。肺炎発症には、原因菌の上気道への定着が重要であると考えられている。特に高齢者での上気道への定着はしばしば観察され、上気道と下気道には密接な関係性がある。肺炎のように下気道感染症を発症時に上気道マイクロバイオームが影響を受けるのかは知られていない。そこで、マウスを用いて下気道感染症発症中の上気道マイクロバイオームの特徴を解析した。C57Bl/6Jマウスへ、Klebsiella pneumoniae KEN-11株経気管的に接種することで、肺炎モデルを作成した。感染24時間後の口腔ぬぐい液、鼻腔洗浄液、気管支肺胞洗浄液を採取した。それぞれの細菌叢プロファイルを見るために、各サンプルからの抽出核酸に対して、メタシークエンスを行った。細菌叢解析は多様性の変化をShannon index(α多様性)を用いて評価し、非感染マウスと感染マウスの間の細菌叢(β多様性)を比較した。下気道では、多様性に明らか有意差は認めなかったものの、感染マウスでは細菌叢の変容が起きていた。口腔内細菌叢では、Weighted UniFracに差はないものの、感染マウスで有意な多様性の低下が観察された。感染群では占拠率が科レベルで増加している細菌が感染群で多く、特に、感染群でCarnobacteriaceae科グループ細菌の上昇が観察された。本研究では、下気道感染症発症中に鼻腔よりもむしろ口腔内の細菌叢の特徴に変化が観察されることが明らかとなった。口腔内環境は誤嚥性肺炎の原因としての認識が強いが、下気道感染症の存在自体で口腔内細菌叢が変容することが示され、下気道から上気道への何らかのフィードバック機能があるものと推測された。
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