• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

難治性真菌感染症の克服を目指した新規治療戦略の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K09573
研究機関長崎大学

研究代表者

宮崎 泰可  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (60448496)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード抗真菌薬耐性
研究実績の概要

本研究は病原真菌Candida glabrataにおける多剤耐性機序の解明を目的としている。以前、研究代表者は、わずか一つの遺伝子の一つのアミノ酸変異によって多剤耐性が誘導されることを見出した。その後、DNAマイクロアレイを用いた網羅的解析とリアルタイムPCRによる検証を行い、ある細胞内シグナル伝達経路の転写調節因子が活性化されることによって、薬剤排出ポンプ遺伝子の高発現をきたしていることが明らかとなった。その結果、実際に細胞内薬剤濃度が著明に減少していることをフローサイトメトリー解析で確認した。さらに、これらの関連遺伝子欠損株を作製し、感受性が回復することを確認できたため、薬剤排出ポンプの活性化が一つの機序として関与していると結論付けた。電子顕微鏡による細胞構造解析では有意な所見を認めなかったが、薬剤と標的分子の結合にも何らかの影響を及ぼしていると推察されたため細胞膜構成成分を解析し、感受性株と耐性株の間に重要な違いがあることを見出した。
また、今回の責任遺伝子の野生型と変異型にそれぞれ3xFLAG-HAタグを付け、免疫沈降法を行った。Western blottingの結果から、有意に差があるものについて、LC-MS/MSおよびMALDI-TOF/MSを用いて関連分子を同定した。その後、これらの遺伝子欠損株および変異株を作製して、今回の多剤耐性機序に関与している上流の細胞内シグナル伝達経路を同定した。現在、これら一連の研究成果をまとめて、学会および国際論文への発表準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度の研究計画として、C. glabrataにおける多剤耐性機序をより詳細に解明するため、関連している細胞内シグナル伝達経路の細部を検証する研究計画を掲げた。具体的には、責任遺伝子変異による二次的影響を解析後、関与していると推定された遺伝子のタグ付き株を作製し、免疫沈降法とLC-MS/MS、MALDI-TOF/MSを用いて関連分子を同定した。また、薬剤排出ポンプのみならず細胞膜構成成分の変化も多剤耐性に関与していると推察している。今回、C. glabrataがどのようなメカニズムで多剤耐性を獲得しているのか、関与している細胞内シグナル伝達経路を含めて明らかにすることができた。一方、新規治療薬の開発を目指した化合物ライブラリーのスクリーニングについては、効率的なアッセイ系を確立し、現在までに主要な病原真菌に活性を有するヒット化合物を複数同定できたため、それらの広域性と毒性の評価を行った。
当初予定していた研究計画は順調に進行し期待通りの成果が得られたが、本研究の目的をより精緻に達成するための追加実験を行い、これらの研究成果をまとめて次年度の学会および論文で発表するために経費の一部を平成30年度分として繰り越した。

今後の研究の推進方策

平成27年度から29年度の研究成果から、C. glabrataにおける多剤耐性機序が明らかになったため、現在学会発表と論文化の準備を進めている。
また、化合物ライブラリーのスクリーニングで得られたヒット化合物については、構造展開を行い、抗真菌活性と毒性の評価を進めていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた研究計画は順調に進行し期待通りの成果が得られたが、本研究の目的をより精緻に達成するための追加実験を行った。これらの研究成果をまとめ、学会および論文で発表するための経費を次年度に延長することとした。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Clinical and Microbiological Characteristics of Candida guilliermondii and Candida fermentati2018

    • 著者名/発表者名
      Hirayama Tatsuro、Miyazaki Taiga、Yamagishi Yuka、Mikamo Hiroshige、et al.
    • 雑誌名

      Antimicrobial Agents and Chemotherapy

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1128/AAC.02528-17

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Unexpected effects of azole transporter inhibitors on antifungal susceptibility in Candida glabrata and other pathogenic Candida species2017

    • 著者名/発表者名
      Nagayoshi Yohsuke、Miyazaki Taiga、Shimamura Shintaro、Nakayama Hironobu、Minematsu Asuka、Yamauchi Shunsuke、Takazono Takahiro、Nakamura Shigeki、Yanagihara Katsunori、Kohno Shigeru、Mukae Hiroshi、Izumikawa Koichi
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 12 ページ: e0180990

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0180990

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 侵襲性カンジダ症に関する最新の話題2018

    • 著者名/発表者名
      宮崎泰可
    • 学会等名
      第29回 日本臨床微生物学会
  • [学会発表] カンジダの抗真菌薬耐性2017

    • 著者名/発表者名
      宮崎泰可
    • 学会等名
      第91回日本感染症学会総会・学術講演会
  • [学会発表] 抗真菌薬の適正使用を考える2017

    • 著者名/発表者名
      宮崎泰可
    • 学会等名
      第61回日本医真菌学会総会・学術集会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi