研究課題
本研究は、HIV-1(HIV)粒子を形成する構造蛋白であるcapsid(CA)に対して特異的に結合し、更にCAの自己崩壊(自壊)を誘導する事でHIVの増殖を抑制する、今まで報告の無い機序を有する抗HIV剤の開発を目指すものである。我々は治療不応となったHIV感染者由来株に認められるCAのアミノ酸挿入変異 (AA) に注目、このようなAAを有する変異株では今まで報告の無いCAの異常な自壊が起こる事を見出した。CAにAAを導入した変異株を多数作成・検討した結果、本現象は変異株を培養する事で進行し、変異株ではCA殻の形成不全が起こり、著しく感染・複製能が低下する等多数のデータを得ている(論文投稿中、under revision)。以上より、挿入変異CA自体がその構造学的変化により自壊すると推測でき、この構造的不安定性が耐性株の低複製能に関連していると考えられる。本知見を基に、AAが入る事でCAの自壊を来すCAの標的部位へ強固に結合する化合物は同様の現象を誘発し得ると考え、新規治療法に繋がる化合物の検索・評価を行った。HIV CA結晶の表面構造を解析する事でCAの標的部位近傍に疎水性cavityを同定、800万個超の化合物データを基にdocking simulationにより各化合物とCA間の結合スコアを計算、良スコアの化合物は購入し抗HIV活性を評価した。ELISAやWBにより新規同定した抗HIV化合物群のCAに対する作用の有無を評価し、3種類の化合物において著明なCAの自壊誘導活性を有する事を見出した。電顕で成熟HIV粒子に対する同定したCA自壊誘導化合物の影響を評価した。更に各種アミノ酸欠損変異CAを作成しCA-化合物間での結合部位の推測を行った。CA自壊誘導化合物の構造最適化を図るため合成展開を進め、また同定したCA自壊誘導化合物に関して特許出願・PCT出願を行った。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
ACS Medicinal Chemistry Letters.
巻: 9(12) ページ: 1211-1216
10.1021/acsmedchemlett.8b00374
Journal of Medicinal Chemistry.
巻: 61(10) ページ: 4561-4577
10.1021/acs.jmedchem.8b00298
ChemistrySelect.
巻: 3(11) ページ: 3313-3317
10.1002/slct.201800527