研究実績の概要 |
杏林大学を受診した気管支喘息発作症例(入院or外来)の鼻腔または喀痰からスワブ検体を採取し, HMPV, HRV, enterovirus, influenza viruses, HPIV, RSV, human coronavirus, adenovirus, Mycoplasma pneumoniae, Chlamydophila pneumoniaeなどの有無をPCR検査を用いて 検討した。気管支喘息発作を認めた入院症例49症例のうち65.3%(32症例)に、外来57症例のうち19.3%(11症例)にウイルス感染の関与があることが判明した。入院症例は外来症例と比して年齢が若い傾向にあり、有意に喘鳴や低酸素血症の陽性例が多かった。 入院症例のうちウイルス陽性群と陰性群の比較では、前者で気管支喘息の罹患期間が長く、PaCO2の貯留傾向を認めた。興味深いことに末梢血の炎症反応(WWBC,CRP,IgE値、好酸球%)は有意差を認めなかった。また両者の入院期間、喘鳴消失までの時間、ステロイド投与期間も差を認めなかった。 入院、外来をすべて合わせた全症例のウイルス陽性例(n=44)のうちHRV(HRV-A:n=12, HRV-B: n=1, HRV-C: n=11)が最も多く、hMPV, influenza viruses、RSVがそれに続いた。日本人の成人の喘息発作時の原因に関するデータは乏しく本研究結果によりウイルスが喘息発作の主たる原因であることが明らかとなった。またこれまでの通年のデータでHRVの関与は秋に多いこと、HRV-AまたはHRV-Cが最も気管支喘息発作に関与することも判明した。ウイルスの系統樹解析も行っており、特定のHRVの種が多いわけではないことも判明している。これまでの過去の報告で気管支喘息発作の誘因としての関与が疑われてきたMycoplasma pneumoniae, Chlamydophila pneumoniaeの検出は本研究では一例も認めなかった。以上の結果は2017年度の第57回呼吸器学会総会で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、気管支喘息発作期と安定期の経過観察を続け、気道病変の増悪を呼気NOの測定、呼気凝集試験、喘息コントロールの評価(ACT score, ACQ5 score)などを用いて評価していく方針である。入院の病床数や患者の都合により、外来患者ではday1, 7, 30, 入院患者ではday1, 7, 14, 30の検体採取がプロトコールに沿って行えない状況もあるが、引き続きデータの集積を行う予定である。
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