研究実績の概要 |
本研究では喘息発作を生じた106症例(入院49症例、外来57症例)をエントリーした。ウイルス感染単独は39症例、ウイルスと細菌の混合感染は5症例、細菌感染単独は5症例でった。入院患者, 外来患者のうちウイルス陽性はそれぞれ75.3%(N=33), 19.3%(N=11)であり有意に前者で陽性率が高かった。入院患者でのウイルス陽性、陰性群はそれぞれ33症例、17症例であり、両群の比較では有意差はなかったが、前者でPaCO2が高い傾向を示した。両群での入院期間、喘鳴の継続した日数、入院期間、ステロイド治療期間に差を認めなかった。 ウイルス感染は3年間の検討において、human rhinovirus(HRV) (N=24), human-metapneumovirus(hMPV)(N=9), influenza virus(Inf-V)(N=8), respiratory syncytial virus(RSV) (N=3)の順で多くHRVはHRV-A, Cが多かった。重要なことに、hMPVは春に多く、HRVやRSVは秋に、Inf-Vは冬から春に多いことが確認された。3年間を通して喘息発作に関わるウイルス感染の季節性の存在は、本邦ではいまだ報告されていない事象である。 また興味深いことに従来、喘息発作への関与が考えられていたMycoplasma pneumoniaeやChlamydophila pneumophilaは全症例の中で一例も検出されなかった。 本研究は喘息発作にはウイルス感染が最も関与し、中でも感冒に関わるHRVが最も多く、seasonal predilectionが気管支喘息発作に関わるウイルスには存在することを証明した。 HRV, hMPV, RSV, Inf-Vの遺伝子の系統樹解析では各ウイルスで多様性があり、遺伝学的に突出して多いtypeは認めなかった。以上をMedicine (2017) 96:42(e8204)に報告した。
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