研究課題/領域番号 |
15K09581
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
片山 由紀 順天堂大学, 医学部, 助教 (60365591)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬剤耐性 / 難治感染症 / MRSA / バンコマイシン / VISA / slow-VISA / 緊縮応答 / rpoB |
研究実績の概要 |
薬剤耐性菌(Antimicrobial Resistance; AMR)が増加しWHOや主要国首脳会議から抗菌薬使用制限が提言され、本邦でも2015年5月世界保健機構(WHO)が掲げた国家行動計画AMR対策アクションプラン「不要な抗菌薬投与の削減」「2020 年までに数十%の抗菌薬耐性菌の減少」を策定した。本研究は、AMR の中でも全ての疾病に関わり最も検出頻度の高い“難治性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症”に焦点をあて、その再燃や蔓延に関与する新規高度薬剤耐性化機構の解明から検出・判定方法の世界基準を確立し、実用化に向けた治療戦略の臨床開発を実施した。 ①難治性MRSA感染症の治療には大きな2つの問題がある、1)バンコマイシン(VCM)が奏功しない症例が増加しているにもかかわらず、患者からVISA株が検出されない。2)再燃・持続感染症を起こしやすい機序が明らかになっていない。これらの問題を検討したところ、新規表現型のslow-VISAの関与を見出した。②その薬剤耐性機序には緊縮応答が関わっている可能性を示唆、③JST 海外支援によりslow-VISAの検出方法を開発し国際特許を取得、④国内医療施設におけるslow-VISA の蔓延を明らかにした。さらに⑤MALDI-TOF MS (Matrix Assisted Laser Desorption Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)による迅速かつ簡易な軽度耐性hVISA自動判別プログラムを開発し、そのソフトウェアをインターネット上に近々公開する。以上の研究結果を国際/国内学会かつ英文原著論文(査読あり)にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた研究計画書のうち、国内外の研究打合わせ、学会発表、論文投稿と出版等の進行が、傷病によりやや遅れた。現時点で、論文作成中、投稿中、訂正中の論文があり、まだ全ての実験結果を公表していないこと、また議論の余地が残されており、それらを次年度で実施する。
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今後の研究の推進方策 |
1) slow-VISA の耐性機序を検討した結果、緊縮応答が関与していたことが示唆された。現在、緊縮応答ネットワークの詳細について検討している。緊縮応答は、ほとんどの微生物に存在する細胞応答なので、他の病原性細菌の感染症や常在菌の研究にも応用できる。 2) MALDI-TOF MS (Matrix-Assisted Laser Desorption Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)機器による低感受性hVISA自動判別法の国際基準の確立。hVISA の判定方法は各国様々で世界基準は定められていないため、世界で初めて臨床検査室で迅速に簡便で検出できるhVISA/VSSA自動判別プログラムを開発した。現在、臨床検査室での実用化に向けて、ソフトウェアをインターネット上に近々公開し、統一したシステムを開発している。将来、MRSAの蔓延と不適切な抗菌剤使用の減少が大いに期待される。 3)新規高度耐性菌slow-VISAと低感受性slow-hVISA判定法の国際基準の確立している。既存の方法では検出不可能なslow-VISAの検出方法を開発した。国内医療施設からslow-VISA が 15.6% の高頻度で検出されたため、実際にMRSA再燃感染症例からslow-VISAが検出されているため判定基準を定義し(T.Azechi et. al.,in submitted)早急な対応が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:当初予定していた研究計画書のうち、国内外の研究打合わせ、学会発表、論文作成、投稿および出版等の進行が、傷病によりやや遅れたため、次年度へ繰り越した。 使用計画:現時点で、論文作成中、投稿中および訂正中の論文があり、まだ全ての実験結果を公表していないこと、また議論の余地が残されており、それらを次年度で実施する。
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