研究課題/領域番号 |
15K09584
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
松本 哲哉 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10256688)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | バクテリアルトランスロケーション / 粘膜免疫 / 炎症性腸疾患 / NKT細胞 |
研究実績の概要 |
バクテリアル・トランスロケーション(BT)は腸管内の菌がリンパ行性あるいは血行性に腸管以外の部位に侵入する現象である。BTの発症リスクとしては各種の疾患が挙げられるが、特に低栄養や免疫不全においては腸管のバリア機能が低下し、BTが発生する可能性が高まる。そこで、本研究ではBTにおける粘膜免疫の関与について焦点を当て、消化管において重要な役割を果たしているNKT細胞の関わりについて以下の検討を行った。NKT細胞が欠如したCD1dノックアウトマウスとコントロールのBalb/cマウスを用いて、DDSによる炎症性腸疾患(IBD)モデルを作成した。NKT細胞が感染防御に働けばBTを抑制することができマウスの生存率が上昇することが推測され、当初はCD1dノックアウトマウスの方が死亡率が高いと予想された。しかし実際は予想に反して、死亡率はCD1dノックアウトマウスの方がコントロールマウスと比較して有意に低いという結果が得られた。この結果はすなわち、NKT細胞がIBDの重症化にも関与している可能性が示唆された。死亡する前の段階で各種臓器の培養を行った結果、コントロールマウスにおいてBTを起こしている菌は特定の菌種ではなく、腸管内に定着している正常細菌叢が大半であった。以上の結果から、IBDにおけるBTや菌血症の原因菌は腸管内の菌であれば、どの菌種でも起こし得ること、また、BTの発生には粘膜免疫に重要な役割を果たすNKT細胞が関与している可能性が示唆された。まだ具体的な機序に関する部分については、具体的な検証を行うことが必要であり、さらに検討を継続していく必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CD1dノックアウトマウスを用いた炎症性腸疾患(IBD)モデルの検討によって、再現性を持ってCD1dノックアウトマウスの方が死亡率が低いという結果が得られている。さらに詳細に機序を含めた検討が必要であるが、CD1dノックアウトマウスは施設内で増やして実験に用いているため、研究のペースが遅くなりがちである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、NKT細胞のIBD重症化の機序を明らかにし、BT予防の観点から対応策などについて検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
CD1dノックアウトマウスは施設内で増やして実験に用いている。昨年度は動物実験センターの改修が入り、研究が予定より遅れてしまったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
CD1dノックアウトマウスの繁殖条件は十分に整ったため、予定されている研究計画に従って実験を進める。
|