研究課題/領域番号 |
15K09585
|
研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
奥村 裕司 相模女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70294725)
|
研究分担者 |
永野 ひかる 相模女子大学, 公私立大学の部局等, 助手 (10748924)
嶋田 昌子 相模女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30637369)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 高病原性感染症 / ウイルス活性化酵素 / 膜結合型プロテアーゼ / 酵素阻害剤 |
研究実績の概要 |
高病原性鳥インフルエンザウイルスが感染性を獲得するためには、弱毒株同様、宿主側のプロテアーゼによるウイルス外膜糖タンパク質(ヘマグルチニン:HA)の限定分解が必須である。高病原性である所以は、このHAのプロテアーゼ切断部位が、複数の連続した塩基性アミノ酸(RKKR↓、KKKR↓など)から構成されている点にある。幸いにも、この高病原性特異的HA切断部位配列を認識する宿主プロテアーゼとして、新規ウイルス活性化酵素(膜結合型プロテアーゼ:MSPL/TMPRSS13)を発見し、その酵素学的性状解析ならびに結晶構造解析に成功した。本研究では、ウイルス活性化酵素(MSPL/TMPRSS13)の分子構造を基盤として合成した阻害剤による高病原性鳥インフルエンザ感染阻害効果の詳細を、1)特異的阻害剤を用いた酵素活性の阻害と培養細胞レベルでのウイルス感染増殖様式の変化、2)マウスを用いた個体レベルでのウイルス感染実験における酵素阻害剤の効果の評価、3)発現調節機構を応用した酵素活性の減弱と酵素阻害剤の併用がウイルス感染増殖様式に与える影響から明確にし、具体的な高病原性ウイルス感染症の予防・治療法を提案することを目的としている。本年度は、ウイルス活性化酵素(MSPL/TMPRSS13)の分子構造を基盤として設計した阻害剤(現段階では4種類)のIn Vitroでの性状評価を行った。阻害係数(KiやIC50)や他の類似酵素に対する阻害効果等の結果は、想定以上の特異性を示す結果が得られた。今後は、培養細胞レベルでのウイルス感染実験およびマウスを用いたウイルス感染実験に取り組み、培養細胞レベルのみならず個体レベルでも、MSPL/TMPRSS13特異的阻害剤が、高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染・増殖を制御できることを実証したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、ウイルス活性化酵素(MSPL/TMPRSS13)阻害剤による高病原性鳥インフルエンザ感染阻害効果の詳細を、1)特異的阻害剤を用いた酵素活性の阻害と培養細胞レベルでのウイルス感染増殖様式の変化、2)マウスを用いた個体レベルでのウイルス感染実験における酵素阻害剤の効果の評価、3)発現調節機構を応用した酵素活性の減弱と酵素阻害剤の併用がウイルス感染増殖様式に与える影響から明確にし、具体的な高病原性ウイルス感染症の予防・治療法を提案することを達成目標としている。現段階では、1)はおおむね目標を達成しているものの、2)および3)を含めたウイルス感染実験が必ずしも順調に進んでいるとは言えないため、「研究目的」の達成度は「やや遅れている」と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
ウイルス活性化酵素(MSPL/TMPRSS13)の分子構造を基盤とし合成した特異的阻害剤(4種類)のIn Vitro における性状評価に関しては、想定以上の特異性を示す結果が得られた。よって今後の研究の推進方策としては、この特異的阻害剤を用い、酵素活性の阻害とウイルス感染増殖様式の変化を、先ずは培養細胞(MSPL/TMPRSS13 安定発現細胞株)を用いた感染実験、次いでマウスを用いた感染実験により評価する。さらにその結果より、最終目標である具体的な高病原性鳥インフルエンザウイルス感染制御法を提案する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
特異的阻害剤の性状評価は順調に進んだものの、培養細胞レベルでのウイルス感染実験およびマウス(実験動物)を用いたウイルス感染実験が思っていたよりも進まなかったことから、細胞培養および動物飼育に関連する経費が当初の予定よりも少なかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は、培養細胞レベルでの実験系に関して、これまで様々な評価系に用いられてきた蛍光顕微鏡のイメージングシステムが老朽化・故障したため、安価ではあるが機能性に優れた新しいシステムを購入する予定である。またマウス(実験動物)を用いたウイルス感染実験を少しでも前に進めていくため、必要となる飼育費・維持費にも使用する予定である。
|