研究実績の概要 |
本研究の平成27年度の計画は、クラッベ病のモデルであるtwitcherマウスを用いて現在、効果が限定されている骨髄移植の効果を改善することであった。年度をまたぐ計画であり、本年度は雑誌論文、研究発表等での実績は得られていない。ところが、本年度中に、米国の研究グループから、骨髄移植と他の治療法の組み合わせをtwitcherマウスに用いて延命効果を認めたという報告がなされた(Hawkins-Salsbury JA et al., Mechanism-based combination treatment dramatically increases therapeutic efficacy in murine globoid cell leukodystrophy. J Neurosci, 2015, 35: 6495-6505)。これは治療アプローチとしては本研究と競合するものであり、結果として本研究のインパクトをいくらか弱くしてしまった。そこで本研究計画の一歩先の計画として考えていた、ヒト由来グリア前駆細胞のtwitcherマウスへの移植を前倒しして行うことを決めた。マウスとヒトではグリア前駆細胞からオリゴデンドロサイトへ分化して髄鞘を形成する過程には違いが認められており、ヒト細胞でクラッベ病への治療効果を示す意義は非常に大きい。そこで申請者が米国ロチェスター大学で用いていた方法により、ヒトiPS細胞株(409B2株,理化学研究所)を胚様体、続いて神経幹細胞へと誘導した。現在、PAX6陽性、nestin陽性の神経幹細胞は樹立できており、olig2陽性, PDFD-R-alpha陽性のグリア前駆細胞へと誘導している。今後は、この前駆細胞がin vitroでオリゴデンドロサイトへと分化できることを確認したのちに、移植実験に用いる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は27年度、28年度と2年にまたがって余裕を持って計画されているので、予定通りの実績を期間内に出すことができると考えている。 ただし、申請者が提案していた骨髄移植と他の治療方法の組み合わせについて、米国のグループから類似した報告がなされた (J Neurosci, 2015, 35: 6495)。申請者の計画と全く同一の組み合わせではないにしても、治療法のアプローチとしては先を越された感がある。今後、申請者は本研究の臨床的意義を強調するために、ヒト由来のグリア前駆細胞をマウスへの移植に用いることを決めた。現在、ヒトiPS細胞由来のグリア前駆細胞の培養方法を確立中である。twitcherマウスについてはヒト由来細胞を受け入れるため、免疫不全マウスと交配させて拒絶反応を防ぐよう準備をしている。
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