研究実績の概要 |
本研究の目的はクラッベ病のモデルであるtwitcherマウスを用いて、現在限定的である骨髄移植の効果を改善することであった。その方策として、骨髄移植を軸として、髄鞘形成細胞の脳内移植や炎症環境を制御するサイトカイン等の投与を組み合わせて行い、40日程度であるtwitcherマウスの寿命を延長することを目指した。ところが、平成27年度中に米国の研究グループから、骨髄移植と他の治療法の組み合わせをtwitcherマウスに用いて延命効果を認めたという報告がなされた(Hawkins-Salsbury JA et al., J Neurosci, 2015, 35: 6495-6505)。続いてアデノ関連ウイルスを用いたGALC遺伝子の導入し、twitcherマウスの寿命を平均300日近くまで伸ばす論文が発表された(Marshall, M. S., et al., Mol Ther, 2018, 26: 874-889)。これらは治療アプローチとしては本研究と競合し、また十分有用な効果を示したため、本研究のインパクトを弱くしてしまった。そこで本研究計画の一歩先の計画として考えていた、ヒト由来グリア前駆細胞のtwitcherマウスへの移植を前倒しして行った。ヒトiPS細胞株(409B2株,理化学研究所)を胚様体、続いて神経幹細胞へと誘導し、olig2陽性、PDFD-R-alpha陽性のグリア前駆細胞へと誘導することができた。今後は、このヒト前駆細胞を移植実験に用いることで、実際の治療へ向けて研究を進めていく予定である。これまでの研究データをまとめて、クラッベ病に対する細胞移植による髄鞘修復に関して1報の論文を発表した ( J Neurosci Res, 94: 1195-1202, 2016)。
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