研究課題
本研究の目的は、シトリン欠損症患者がどのような特性を持つと重症化するかについての解析、および重症化した病態をいかに治療が可能かを解析し、有効な治療法を開発することである。昨年度には、餌のオートクレーブによる滅菌化の影響(オートクレーブ滅菌をした餌(CE-2)を投与すると成長が遅れ、血中アンモニア濃度が上昇する事)を明らかにするとともに、シトリン欠損症モデルマウスがショ糖、グリセロール、エタノールを自由摂取させると他の対照マウスに比し、摂取量が少なく、忌避していること、さらにこの忌避行動に関連して肝臓中の代謝物の変動が起こること、忌避は肝内グリセロール3-リン酸の上昇とATP (または全アデニンヌクレオチド)濃度の低下が同時に起こった時に起こることを明らかにした。この現象は、肝グリセロール3-リン酸の減少をもたらすような物質(各種アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムなど)投与によってショ糖などの摂取量が増加することを説明した。さらに肝内のグリセロール3-リン酸の上昇を、アラニン、グリシン、グルタミン酸などの多くのアミノ酸の同時投与で抑制できること、さらにショ糖とグリシンを同時投与すると異常に血中アンモニアが上昇することを見出し、これに対して最も有効なアミノ酸の同定を行っている。現在、さらに20%ショ糖を自由摂取させると、ショ糖の摂取量はマウス個体ごとに異なるが、多く摂取するシトリン欠損症モデルマウスはその間の体重減少が大きいことを見出し、autophagy現象を伴っているのではないか、と検索に取り掛かっている。
2: おおむね順調に進展している
Modifier geneの発見、肝ASSの低下などは現在までのところ、明確な結果は得られていないなど、当初の予定とは若干異なっているが、多くの大変興味ある結果を得ている。以下にそれらを列挙すると、(1)ショ糖などの摂取抑制(忌避)が肝内代謝物変動と関連づけることが可能となった。(2)肝臓におけるグリセロール3-リン酸の上昇を指標にして多くの有効なアミノ酸を見出した。(3)しかし中には同時に血中アンモニアの上昇を起こすアミノ酸も見出し、これらは治療薬としては役に立たないが、高アンモニア血症のモデル作成に有効であることも見出した。(4)餌(CE-2)のオートクレーブ処理がシトリン欠損症モデルマウスにとって成長障害や高アンモニア血症誘発などの作用を持つことを見出した。これらは今後の最終目標である治療薬開発に大いに役立つものと考えている。
本研究を通じて、今後追求すべきテーマと実験・研究方法が見えてきたので、今後は順調に推進できるものと考えています。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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