研究課題
本研究の目的は、シトリン欠損症患者がどのような特性を持つと重症化するかについて解析し、さらに重症化した病態がいかに治療可能かを解析し、有効な治療法を開発することである。昨年度は、アミノ酸の検索から、高度かつ新たな高アンモニア血症モデルを作成することに成功した。このモデルを用いて、高アンモニア血症の治療に有効なアミノ酸の組み合わせを見出すことができた。すなわち、シトリン欠損症モデルであるCitrin/mGPD double-KOマウスにショ糖とグリシンを投与すると血中アンモニアは1000microg/dL以上に上昇したが、これにオルニチンとアスパラギン酸を投与すると血中アンモニアはほとんど野生型の正常値の値まで低下させることに成功した。現在、血中アンモニア低下作用以外にどのような作用があるのかを検討中であるが、少なくとも食事摂取量の増加、体重増加などの有効な作用が確認できている。この結果は直ちに重篤なCTLN2患者の治療に用いることができると考え、臨床研究への応用の可能性を検討している。栄養調査と臨床検査によってシトリン欠損症の重症化を起こす要因について検討する疫学研究は現在、準備が整い、若干名の患者への栄養調査を開始した段階である。今後も継続して研究を進めていく予定である。発症要因と考えられる糖質、アルコール、グリセロールについては本モデルマウスにおいて摂取を忌避する行動が観察され、これには肝臓の代謝中間体である、グリセロール3リン酸の増加とATPの低下が関与することを明らかにしてきたが、これがどのようにして脳に情報を伝達しているのか、また、脳からの忌避の機構についてもすでに若干の結果を得ているので、今後はさらに検討を重ねる予定である。
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Mol. Genet. Metab.
巻: 120(4) ページ: 306-316
10.1016/j.ymgme.2017.02.004.