研究課題
小児慢性疲労症候群(Childhood Chronic Fatigue Syndrome, CCFS)と不注意優勢型の注意欠陥多動症候群(Attention Deficit Hyperactivity Disorder, ADHD)に共通する中核症状「慢性疲労・不注意・学習意欲および報酬の感受性低下」に関わる脳神経基盤について機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて検討する。そして、両疾患患児を対象とした各種治療によって変化する注意の制御機能と報酬の感受性に関わる脳活動を手掛かりとし治療効果を検証したうえでCCFS患児とADHD患児の中長期的な治療法を確立することを目的とした。CCFS患児のうちADHD患児と同様に不注意症状が顕著な症例において、昨年度の結果では、数週間の治療前後に行動生理学的検査を実施し、注意課題成績が改善する症例を認めた。さらに長期フォローアップ検査を行い、4~8ヶ月間の長期治療後においても注意課題成績の改善が維持されていることが明らかとなった。脳科学研究については、熊本震災の影響もあり今年度の実施が困難な状況にあったが、次年度より再開すべく研究体制の見直しを行い実施に向けての基盤を再整備した。
3: やや遅れている
行動試験は順調に進めることができている。一方で、熊本震災の影響もあり、MRI研究の実施が遅れているため。しかしながら、研究体制の再構築を行うことができ、研究を次年度より進めていく予定である。
行動試験における長期治療結果が良好であったことから、CCFSおよびADHD患児の中長期的な治療効果を脳科学的な検証を進めて行き、治療の有効性を明らかにすることを目指す。中長期的な治療介入効果を検証するためには、被験者負担などが大きいことも考慮し慎重に被験者の選定を行うと共に、一旦同意取得後もいつでも同意撤回可能だということをインフォームドコンセント取得時に文章に明示するだけでなく、分かり易く候補被験者とその家族に対し説明するように努める。慎重に研究を進めながらも、CCFS患児とADHD患児における不注意と学習意欲・報酬感受性の脳内機序および中長期的な治療効果について医療従事者と国民に還元できる新たな知見が得られるよう研究を進めて行く。
熊本震災の影響により研究の遅れを余儀なくされ、研究協力者(被験者)謝金などの予算確保が必要となり次年度に使用を希望する研究費が生じた。
上記理由により、次年度の本実験参加の被験者謝金として執行予定である。
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健康教室 2017年2月号
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Neuroimage: Clinical
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10.1016/j.nicl.2016.09.016
教育と医学
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