研究課題/領域番号 |
15K09599
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
長谷川 奉延 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20189533)
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研究分担者 |
鳴海 覚志 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (40365317)
木下 政人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60263125)
石井 智弘 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (70265867)
天野 直子 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (70348689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MIRAGE症候群 / 疾患モデル細胞 / 疾患モデル動物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は成長障害を主症状の1つとするMIRAGE症候群(以下本症候群)の疾患モデル細胞およびモデル動物を作成し、変異SAMD9の機能をin vitroおよびin vivoで解明することである。平成27年度、第1に本症候群疾患モデル細胞を樹立し、その増殖能を解析した。具体的には哺乳動物細胞のゲノムへの安定型遺伝子組み込みを利用し、ヒト胎児腎由来HEK293細胞に野生型遺伝子SAMD9を導入した細胞(野生型SAMD9細胞)、および本症候群患者で同定した8つの変異型遺伝子SAMD9を各々導入した細胞(疾患モデル細胞)を作成した。遺伝子非導入HEK293細胞、野生型SAMD9細胞および疾患モデル細胞を培養し、タイムラプス顕微鏡で、3時間毎に120時間コンフルエンスを計測した。野生型SAMD9細胞は遺伝子非導入HEK293細胞に比し細胞増殖はやや不良であった。すなわちほぼコンフルエントになった時間は、遺伝子非導入HEK293細胞で60時間であったのに比し、野生型SAMD9細胞で80時間であった。さらに8種類の疾患モデル細胞は野生型SAMD9細胞に比し、細胞増殖は明らかに不良であった。すなわち、8つの疾患モデル細胞すべての120時間後のコンフルエンスは20~40%であった。 第2に本症候群モデル動物である遺伝子改変メダカを作成中である。はじめにCreリコンビナーゼ誘導下に高感度緑色蛍光たんぱく質(以下EGFP)および野生型(あるいは変異型)SAMD9遺伝子を発現するベクターを作成した。このベクターを受精卵1細胞期にマイクロインジェクションした。飼育中の受精卵においてEGFPの誘導発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には2つの研究計画を実施予定であった。第1に予定していた「本症候群疾患モデル細胞の樹立と細胞増殖能の解析」については予定通り研究が進行し、終了した。すなわち、8種類の本症候群疾患モデル細胞の樹立に成功し、その細胞増殖能を定量評価することに成功した。全ての本症候群疾患モデル細胞の増殖は極めて不良であった。 第2に予定していた「変異SAMD9を有する本症候群モデル動物である遺伝子改変メダカの作成」については、当初の実験計画を修正し、結果的にほぼ予定通りに研究が進行した。当初、heat-inducible プロモーターに赤色蛍光たんぱく質タグつき野生型SAMD9遺伝子を連結したベクターを構築した。このベクターを受精卵の1細胞期にマイクロインジェクションしたところ、受精卵が分化増殖することはなかった。野生型SAMD9遺伝子が漏出発現し、その細胞増殖抑制作用のために受精卵が育たなかったと考え、コンストラクトを作り直した。すなわち、Creリコンビナーゼ誘導下に高感度緑色蛍光たんぱく質(以下EGFP)および野生型(あるいは変異型)SAMD9遺伝子を発現するベクターを作成した。具体的には、マウスアクチンプロモーター制御下に、loxP-終始コドン-lopP、EGFP、野生型SAMD9遺伝子を連結した。このベクターを受精卵の1細胞期にマイクロインジェクションし、Creリコンビナーゼ誘導下の受精卵にEGFPの発現を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変メダカに関しては、F0個体を成魚になるまで飼育後に掛け合わせを行う。F1メダカのゲノムDNAを調べ、野生型SAMD9遺伝子あるいは変異型SAMD9遺伝子の伝達を確認し、成長を含む表現型を解析する。すなわち、体長および体重の計測、光学顕微鏡による形態変化の観察、および蛍光顕微鏡によるSAMD9遺伝子の発現の観察を行う。 さらに本症候群モデル動物である遺伝子改変マウスの作成に着手する。哺乳類であるマウスの疾患モデルは、難治性疾患の病態解明と治療応用に重要な役割を果たすため、本症候群で同定された変異型SAMD9を発現するマウスを作成する。すなわち、まずROSA26遺伝子プロモーターの制御下でloxP-終止コドン-loxPの3’側に野生型あるいは変異型SAMD9遺伝子を連結したROSA26/Sノックインマウスをそれぞれ作成する。ROSA26を利用する理由は、ES細胞内での相同組換え効率が高いこと、エピジェノミックな発現修飾を受けにくいこと、コピー数の調節が可能であること、およびホモ接合性マウスで表現型を示さないことが確認されていること、である。次いで、CAGプロモーター制御下でタモキシフェン誘導型Creリコンビナーゼを発現するCAG/Cre-ERT2トランスジェニックマウスとROSA26/Sノックインマウスを交配し、出生後の個体にタモキシフェンを投与し野生型あるいは変異型SAMD9発現マウスを作成する。各々のマウスの成長(体長および体重)、本症候群の主要罹患組織と考えられる副腎、性腺を組織学的に解析し、比較検討する。
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