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2015 年度 実施状況報告書

成熟シナプスの維持機構の分子基盤 ―レット症候群退行現象の解明を目指して―

研究課題

研究課題/領域番号 15K09602
研究機関東京女子医科大学

研究代表者

矢ヶ崎 有希  東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90392422)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード脳・神経、脳神経疾患 / レット症候群 / MeCP2 / 成熟シナプスの維持機構
研究実績の概要

本研究の目的は、レット症候群の退行現象の解明へと繋がる成熟シナプスの維持機構の分子基盤を解明することである。これまでに、MeCP2KOマウスの網膜-外側膝状体(LGN)シナプスにおいて、成熟シナプスの維持機構が破錠することが明らかとなっている。申請者は、MeCP2KOマウスの発達期のLGNにおける遺伝子発現変化を網羅的に解析するとともに、MeCP2と同様に成熟後のシナプス維持機構の破錠が生じる視覚経験遮断およびmGluR1KOマウスの遺伝子発現変化を解析し、3群に共通する遺伝子発現変化を探索することで、成熟シナプスの維持に必須の因子の同定を目指す。
今年度は基礎実験として、網膜-外側膝状体の発達期(生後10日より生後50日まで)における網膜およびLGNにおけるMeCP2およびmGluR1タンパク質の発現パターンおよび視覚経験遮断による発現変化の有無を検討した。MeCP2タンパク質は網膜神経節細胞層および内顆粒層に、mGluR1は主に内網状層に発現が認められたが、発達期におけるタンパク質発現パターンの変化および、視覚経験遮断による変化は認められなかった。一方、dLGNにおいては、MeCP2タンパク質発現がP10-P30の間で上昇することが、mGluR1タンパク質は生後10-20日の間で急激に上昇することが明らかとなった。シナプス発達の様々な時期(生後10-20、20-30、40-50日)に視覚経験を遮断し、その影響を検討したところ、dLGNにおけるMeCP2タンパク質発現のみ、生後20日以降の視覚経験遮断により減少することが明らかとなった。生後20日は網膜―外側膝状体シナプスが成熟する時期である。これらの結果は、dLGNにおけるMeCP2タンパク質発現がシナプス成熟後においては視覚経験により調節されていることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度実験計画①発達期の外側膝状体におけるMeCP2タンパク質の発現パターンおよび視覚経験遮断によるMeCP2タンパク質の発現変化の解析は、網膜および外側膝状体におけるmGluR1およびMeCP2のタンパク質発現パターンに範囲を広げ、新知見を得ることが出来た。この成果は第38回日本神経科学大会にて発表し、現在論文投稿準備中である。
実験計画②成熟シナプスの維持の破錠が認められた3群(MeCP2KO、mGluR1KO、視覚経験遮断)における遺伝子発現プロファイルは現在計画を遂行途中である。
本申請研究は、全体的におおむね順調に進行しているといえる。

今後の研究の推進方策

本年度の研究結果より、dLGNにおけるMeCP2のタンパク質発現が、成熟シナプスの維持に必須である可能性が示唆される。mGluR1KOマウスでは成熟シナプスの維持が破錠することから、MeCP2タンパク質が減少している可能性も示唆される。mGluR1KOマウスにおいて、MeCP2の発現パターンに変化が認められるか検討する予定である。
平行して、MeCP2KO、mGluR1KO、視覚経験遮断の3群における遺伝子発現変化を次世代シークエンサーにて網羅的に解析し、共通に変化する因子のスクリーニングを行う。つまり、コントロール群に対し、視覚経験遮断群とMeCP2KO群、mGluR1KO群、3群において共通の変化(増加または減少)が認められる因子を抽出する。特に、シナプスの形成・維持に関与する可能性がある分泌タンパク質に着目する予定である。
また、MeCP2KO群、mGluR1KO群において、共通に変化するの因子が認められない場合も考えられる。その場合、MeCP2が関与する経路とmGluR1を介した経路はパラレルである可能性が高い。このような時は、視覚経験遮断群とMeCP2KO群で同様の変化が認められた因子に着目し、以後の解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

実験計画①の発達期の外側膝状体におけるMeCP2タンパク質の発現パターンおよび視覚経験遮断によるMeCP2タンパク質の発現変化の解析により得られた成果の論文作製を優先させたため、次世代シークエンサーを用いたスクリーニングは次年度に行うこととなった。次世代シークエンサーを用いたスクリーニング費用として、試薬・消耗品・解析費180万円を計上していたが、約120万円を次年度に繰越した。

次年度使用額の使用計画

翌年度分と合わせた、約210万円の使用計画は以下の通りである。
次世代シークエンサーを用いたスクリーニングのための費用(試薬・消耗品・解析費):160万円、実験動物(野生型C57BL/6)購入維持費:10万円、その他消耗品費:10万円、学会参加費:15万円、論文掲載費:15万円。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 神経発達症因子 FoxG1によるGABA抑制性回路の発達機構2016

    • 著者名/発表者名
      三好 悟一、植田 禎史、尾崎 弘展 、矢ヶ崎 有希、花嶋 かりな 、Gord Fishell、 宮田 麻理子
    • 学会等名
      第93回日本生理学会大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-23 – 2016-03-23
  • [学会発表] 1型代謝型グルタミン酸受容体による網膜-外側膝状体シナプスの成熟型結合パタンの維持2016

    • 著者名/発表者名
      鳴島 円、内ヶ島 基政 、矢ヶ崎 有希 、原田 武志、南雲 康 、上阪 直史、渡邉 貴樹、 橋本 浩一、饗場 篤、渡辺 雅彦、宮田 麻理子、狩野 方伸
    • 学会等名
      第93回日本生理学会大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-03-22 – 2016-03-22
  • [学会発表] 網膜―視床外側膝状体シナプス維持期におけるMeCP2タンパク質の発現制御2015

    • 著者名/発表者名
      矢ヶ崎 有希、 宮田 麻理子
    • 学会等名
      第38回日本神経科学大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場・神戸国際展示場
    • 年月日
      2015-07-28 – 2015-07-28

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公開日: 2017-01-06  

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