研究課題
低ホスファターゼ血症はヒトでは多様な重症度を示し、重症型では骨形成不全で胸郭形態が維持されず呼吸不全で出生後早期に死亡することもある。単一遺伝子の異常によりおこるアルカリホスファターゼ(ALP)酵素欠損による疾患であり、また、既に酵素補充療法の有効性が示されており、遺伝子治療の有用性が大きいと考えて本研究を行ってきた。低ホスファターゼ血症のモデルマウスとして確立されているAkp2-/- マウスに、新生児期にアデノウイルス随伴ウイルス8型にALPを発現するよう組み込んだAAV8-TNALP-D10 ベクターを大腿四頭筋肉内投与し、生命予後の改善、骨形成の改善が得られるか検討した。AAV8-TNALP-D10 ベクターを1x1011 vg/ml以上投与することで、18カ月以上の延命と血清 ALP値がwild typeマウスの約10倍を維持することを確認した。治療群では肝・腎機能障害、腫瘍発生や、異所性石灰化を認めず、本治療の安全性が担保された。AAV8-TNALP-D10 ベクターの筋肉注射での治療成功は、ベクターの局所投与での治療可能性を示した。また、マイクロCTで骨密度を検討したところ、コントロール群にきわめて近い骨化を得られ、骨形成にも有意であることを示した。なお、非生理的な高濃度の血清ALP濃度による副作用がないか確認するために、生後6週のオスのBL6マウスに、同ベクターを大量に筋肉内投与したところ、血中ALP濃度が1000IU/mlを超えてくると、異所性石灰化を生じるマウスが出現した。活動に影響はなく、内臓・血管には肉眼的に石灰化を認めなかった。血液検査で電解質異常や副甲状腺ホルモンの異常はなかった。以上より、たった1回の局所注射によるAAV8-TNALP-D10 ベクター投与によりAkp2-/- マウスは安全に延命、骨化を得られ、臨床応用への大きな一歩を示した。
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