研究課題/領域番号 |
15K09607
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
升野 光雄 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (00389024)
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研究分担者 |
黒澤 健司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 部門長 (20277031)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メビウス症候群 / ゲノム解析 / 病因 |
研究実績の概要 |
1.メビウス症候群(非典型例)の中枢神経画像を含めた臨床像の確立 メビウス症候群は先天性・非進行性顔面神経麻痺および先天性・非進行性外転神経麻痺(片側性も含む)を特徴とし,他の脳神経麻痺を伴うこともある。メビウス症候群不全型 (incomplete form)を外転神経麻痺を伴わない以外,メビウス症候群と類似の所見を示す症候群と定義し,両側顔面神経麻痺を呈する4例の臨床像,中枢画像所見を明らかにした。対象は男児1例,女児3例,年齢1歳~18歳,在胎週数31週~40週,出生体重1,526 g~2,686 gで早産児1例,一卵性二絨毛膜性双胎2例(ともに双胎の1方が罹患)。NICU入院4例,Apgar score 5点以下3例,出生時蘇生3例,補助呼吸3例,哺乳障害4例,在宅チューブ栄養4例(胃瘻2例),吸引器4例,1例は1歳4か月時に誤嚥・窒息で死亡。眉間タップによる瞬目反応なし4例,咽頭反射なし4例,舌萎縮2例,DQ35未満4例。中枢神経MRI画像はthin slice(CISS法)で評価し,第7脳神経は4例全例で低形成を認め(両側2例,片側2例),第6脳神経は4例全例で正常。脳梁菲薄化2例,橋延髄低形成2例,延髄低形成2例,橋被蓋T2WI高信号1例,両側視床T2WI高信号1例。 2.メビウス症候群(典型例および非典型例)のゲノム解析による責任遺伝子同定 1)全エクソーム解析によるメビウス症候群の候補責任遺伝子同定:本研究開始までにゲノム解析(マイクロアレイCGH解析,52候補遺伝子ターゲットシークエンス解析)を終了したメビウス症候群典型例19例はすべて弧発例である。平成27年度は,全エクソーム解析をメビウス症候群典型例8例(トリオ解析2家系を含む)に行ったが,責任遺伝子同定には至っていない。 2)メビウス症候群(非典型例)のゲノム解析:単胎の不全型2例のマイクロアレイCGH解析,52候補遺伝子ターゲットシークエンス解析は異常を認めていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.メビウス症候群(非典型例)の中枢神経画像を含めた臨床像の確立 メビウス症候群不全型(incomplete form)を外転神経麻痺がない以外,メビウス症候群と類似の所見を示す症候群と定義し,研究班員の所属医療施設で両側顔面神経麻痺を呈する4例の臨床像,中枢画像所見を明らかにした。今年度10例集積を目標としていたが,今後は他施設症例の集積も視野に入れる。
2.メビウス症候群(典型例および非典型例)のゲノム解析による責任遺伝子同定 1)全エクソーム解析によるメビウス症候群の候補責任遺伝子同定 本研究開始までにゲノム解析(マイクロアレイCGH解析,52候補遺伝子ターゲットシークエンス解析)を終了したメビウス症候群典型例19例はすべて弧発例である。平成27年度は,全エクソーム解析をメビウス症候群典型例10例に予定していたが,平成28年度予定のトリオ解析2家系を優先し,メビウス症候群典型例8例(トリオ解析2家系を含む)に行ったが,責任遺伝子同定には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
1)メビウス症候群(非典型例)の中枢神経画像を含めた臨床像を確立する。 メビウス症候群不全型(incomplete form)症例を目標の10例集積し,臨床像を確立し,病因解明に迫る。 2)次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析により,メビウス症候群(典型例および非典型例)の責任遺伝子を同定する。 典型例の全エクソーム解析を継続する。不全型の一卵性二絨毛膜性双胎2例では,ともに双胎の1方のみの罹患であり,胎生期の血流障害(典型例より遅い12週以降)が原因と考えられた。他の2例は遺伝要因の可能性もあり,エクソーム解析を検討する。 3)責任遺伝子の変異確認された症例の遺伝子型と表現型の関連を明らかにする。 4)責任遺伝子の変異確認された症例の細胞を株化・保存し,理化学研究所バイオリソースセンター(BRC)へ寄託し,病態解明・治療法開発の基盤とする。
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